いっそ撃殺して頂戴




日向くんのその鋭い、相手を逃がさない様な目が大好きでした。髪型は少し個性的だけど、私は可愛いと思い続けていました。その良く通るずっと聞き続けていたくなる声も、表情を物語る眉の形も、たまにしか赤らめる事は無かった頬も、皆の事を考えて行動出来る精神的な面も、言い表せないくらいに大好きだったところは沢山あったんだ。

でも私は何に関しても不器用だったし、根暗に分類される性格だし、才能なんてない…。話したのだってこの島に来て最初の挨拶回りの時だけ。この時から既に自殺したかった。役立たずの私が居ても言い訳無いって。
だから自然と私は周りと距離を置くようになっていたんだ。けれど日向くんは、声は掛けはしないけどさりげなく人一人分の隙間を作ってくれたり、紳士的に、しかも私の性格を理解したうえでのその行動は、私にとって恋に落ちる要素以外の何物でも無かった。
でもやっぱり私じゃ駄目だったんだ。日向くんの周りには才能もある、可愛くて自分に素直な女の子がいた。中でも七海ちゃんと一番親密そうだった。二人で出掛けているのを横目で見ていたんだ。少し頼りない七海ちゃんをしっかりと支えてあげつつ甘えさせてる日向くんは、お似合いっていう言葉がぴったりだった。苦しくなった。見ていたくなかった。


それから私は自殺を決心した。このサバイバルの様な、いかに上手に人を欺けるかが勝負なこの孤島で、分かりやすい入水をはかる。ただでさえ存在感が薄い私でも発見してもらう為に、コテージにあるプールで。
深夜、皆がそれぞれのコテージで眠りについている頃、こっそりプールに入る。いくら夏とは言っても流石に冷たい。まずは足から慣らそう、なんて面倒臭い事はしない。身体ごと入る。夏なのに鳥肌が立つほど寒い。水に入ってぼうっとしているとなんだか走馬灯の様に日向くんの事が思い出された。…悔いが無いかと聞かれたらあるに決まっている。でももう見るのが辛いんだ。考えただけで涙が出る。隠すために顔を水の中に沈める。水の中は思ったよりも綺麗で、涙が更に零れた。ここで死ねるならいいや、なんて思った。
意識を手離す、まえに強く腕を引き上げられ、水上に出る。一瞬何が起こったか分からなかった。目の前には日向くんがいて、息を乱して私をまっすぐに見ている。なんで、助けられたんだろう。そんなことされたら馬鹿な私は期待してしまう。だったらいっそ私の自殺を手伝ってくれれば良かったのに。そこで初めて気付いた。空には沢山の綺麗な星があったんだ。




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