マリア・ブランドーの巻

次に意識を取り戻した時、マリアは病院にいた。

『こ、こは…、』
「マリア…!」
『お兄様…?』
「よかった、よかった…!」
『…お兄様、ここはどこ…?』
「病院だよ、マリア。」
『病院…?お兄様、私、どうしたの?』
「マリア…?」
『私、お兄様のお顔が見えないわ…?』
「え…、」

ディオは気の抜けた声を発していた。チェスで連勝して儲け、気を良くして帰ってきたディオは、家の中から聞こえた物音に血の気が引いた。急いでドアを開けると、

「…マリア…?」
「ディ、ディオ…、」

頭から血を流して倒れている、愛しい妹の姿。そのドレスは、何者かによって破かれていた。誰がやったかなど、目に見えていた。沸々と湧く怒りにディオは、呆然と立ち尽くすダリオに殴りかかった。吹き飛んだダリオ。ディオはマリアに駆け寄った。

「マリア、おい、マリア…!」

気を失っているのか、マリアは返事をしない。ディオはマリアを抱き上げると、ダリオには目もくれず病院へ向かった。医者は、外傷は頭部の切り傷と、こめかみに出来たたんこぶ、体中に出来た痣のみで、頭をぶつけた衝撃で脳しんとうを起こしているのでは、と診断した。痣の多さに医者は気の毒そうな顔をして二人を見ていたが、ディオはそんな視線をものともせず、マリアは大丈夫なのかと問い掛け続けた。

「暫くしたら、目を覚ますでしょう。」

医者はそう言って、マリアに治療を施すと部屋を後にした。治療費は、今日のチェスで儲けたお金を支払った。有り金はゼロ。二人は無一文だ。ディオはマリアの眠るベッドの隣で、マリアの寝顔を見つめていた。額に巻かれた包帯が痛々しい。ディオは歯を食いしばる。父が赦せない。ギリギリと歯が軋む音がした。ピクリ、とマリアの指が動く。ディオはマリアの手を握った。マリアの瞼が震え、ゆっくりと開かれた。そして、目を覚ましたマリアの言葉に、人生で二度目の絶望を味わうのだった。

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眠り姫



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