マリア・ジョースターの巻

それから、目を覚ましたジョナサンは、スピードワゴンやストレイツォから話を聞き、ロンドンにある日の光の通らない地下牢に閉じ込められたマリアに会いにきた。牢の柵越しに二人は二度目の再会に涙を流した。マリアはジョナサンから、今までディオがジョナサンにしてきたことを聞き、涙を流して謝罪をした。ジョナサンはマリアをしからなかった。ディオのやったことで、マリアに罪はない、もう過ぎたことだと、笑いかけた。マリアはジョナサンに告げられなかった今までの恋心を告げた。ジョナサンは悲しげな顔で、マリアにエリナと交際している事、怪我が完治して落ちついたら、エリナと結婚しようと考えていることを告げた。マリアは笑顔でそれを祝福した。二人のために、祝福のピアノを捧げたいと告げた。ジョナサンは快く了承した。

翌日、ジョナサンはマリアにエリナを紹介した。牢屋越しに二人は握手を交わし、マリアは兄の行ってきた非礼を詫びた。エリナは、マリアが謝ることではない、気にしなくていいとほほ笑んだ。マリアは再び涙を流した。そして、その日の夜、マリア・ジョースターは、ジョナサン・ジョースターとエリナ・ペンドルトンへ、祝福のピアノを捧げる。マリアのピアノに、二人は涙を流した。マリアもまた、泣いていた。

「素敵な演奏をありがとう、マリア…。」
「とても綺麗だったわ、マリアさん。」
『こんな事しかできない私をお許しください…。ジョジョ…いいえ、ジョナサンお兄様、エリナお姉さま、…どうか、私とお兄様の分まで末長くお幸せに…。』
「「ありがとう…。」」

それが、二人との最後の会話だった。泣きながら別れの挨拶と抱擁をした。二人が帰った後、マリアは自分の監視役としてロンドンに残っていたストレイツォに感謝を述べた。そして、自分用の棺と、一輪の薔薇を用意してほしいと頼んだ。ストレイツォは理由を聞かなかったが、それに従った。マリアは一つの決断をしていた。

一週間後、マリアの棺が完成した。マリアはストレイツォに最後の望みを伝える。

『どうか、私を生きたまま、兄が落ちた崖の下の海に沈めてください…。』
「…それが、最後の望みか…。」
『私の我儘をお許しください、ストレイツォさん…。これが最後です。』

マリアは自分の体を抱きしめた。

『私の身体が、もう限界を迎えそうなのです。なんとか押しとどめてきましたが、喉の渇きが酷く、少しでも気を抜けば、貴方を襲ってしまいそうで、怖いのです…。』
「…分かった…。最後の望み、叶えよう。」
『ありがとうございます…。』

マリアは涙を流した。用意された棺は、マリアにピッタリのサイズだった。マリアは棺に入り、横になる。ストレイツォがマリアに薔薇の花を手渡す。マリアはそれを受け取ると、胸の上で指を組み、目を閉じた。ストレイツォは静かに蓋を閉め、棺に頑丈な施錠を施した。

棺は、翌日の夜にウインドナイツ・ロットへ運ばれた。ストレイツォが最後まで立ちあい、棺は船から深い海へと沈められた。マリア・ジョースターの人間としての19年という短い人生が絶たれた。そして彼女はこの海の底で眠り続けた。

その翌年、ジョナサン・ジョースターとエリナ・ペンドルトンが結婚式を挙げた。そして、その5日後、ジョナサン・ジョースターはハネムーン中に、生きてたディオと共にその海に沈んだ。生き残ったのは、エリナ・ジョースターと見ず知らずの赤ん坊、そしてエリナの中に芽生えた新しい生命だった。


第一部 ―眠り姫― 完

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眠り姫



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