悪鬼の最期の巻

マリアが目を覚ましたのは、ジョナサンがディオを倒し、波紋戦士たちがゾンビを片付け終わった後だった。ストレイツォはマリアを揺り起こす。ジョナサンは疲労で眠っていた。マリアの瞼が震え、ゆっくりと開かれた。波紋戦士たちは身構える。

『…あなたは…?』
「わたしはストレイツォ。気分はどうだ?」
『…何ともないわ、正常です…。』
「…そうか。」

ストレイツォは考える。彼女は確かに石仮面をかぶり、石仮面は確かに彼女の後頭部に刺さった。吸血鬼へと変貌したはずだった。彼女は吸血衝動に襲われている様子はない。

『…お兄様は…?』
「…君の兄は、ジョナサン・ジョースターに倒されて亡くなった。」
『…そんな…、』
「マリアさん、といったな…。」
『はい…。』
「あなたは、ディオと同じように、石仮面をかぶって吸血鬼になってしまった。」
『吸血鬼…?』
「そうなってしまった以上、我々波紋戦士は人類に害をなす吸血鬼を排除しなくてはならない。…意味はわかるな?」
『…はい…。』
「なにか、未練はあるか?」
『…ジョジョは、』
「ジョースターさんなら、疲れて眠っちまったぜッ!」

スピードワゴンはジョナサンを指差して言った。マリアはジョナサンの元へ歩み寄り、その頬を撫でた。

『…ストレイツォさん、とおっしゃいましたよね…。』
「ああ。」
『…ジョジョは、恐らく、私の初恋の人でした…。』
「…、」
『彼には、確か大切な方がいたはずです…。』

マリアの言葉に、スピードワゴンが口を開く。

「確か、エリナ・ペンドルトンというレディだった気がするぜ、マリアさん。」
『そう…、エリナさんというのですね…。…ストレイツォさん、私に時間を頂けませんか?』
「それは、どういう意味だ?」
『…私、ジョジョに謝罪と感謝を伝えたいのです…。そして、二人の中を祝いたいのです…。どうか、私に時間をください…。』

マリアは頭を下げた。ストレイツォはトンぺティを見る。トンぺティはマリアをじっと見つめる。マリアは顔をあげると、トンぺティと目を合わせる。その目は真っ直ぐと彼を見ていた。

「…ストレイツォ、彼女のいうとおりにしてあげよう…。」
「…分かりました。」
『感謝します…。』

マリアは静かに涙を流した。

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眠り姫



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