稲妻十字空烈刃の巻
マリアは頭部に感じる違和感に目を覚ます。自然と瞼が開いた。石仮面が額から落ちる。金髪の男の顔が見えた。…どこか、見覚えがある。遠い昔の記憶に残る、自分の兄に似ている。
『お兄様…?』
「マリア、」
「!マリアッ!」
聞き覚えのある声が二つ。一つは目の前の男から発せられた声。もう一つは少しはなれた所から発せられた声。
『…ジョジョもいるの…?』
「マリア!」
『私…、どうしちゃったのかしら…、』
「どうした?」
『目の前に、素敵な人が見えるわ…、お兄様の声をしてる…。』
「ああ、おれだよマリア。」
ディオがマリアの頬を撫でる。マリアはもう一つの声の主を探した。ジョナサンの後ろから、波紋戦士たちが部屋に入ってきたため、マリアにはどれがジョナサンか分かっていない。
「マリア、」
ジョナサンがマリアを呼ぶ。マリアはディオの手を離れ、ゆっくりとジョナサンに近付く。
『ジョジョ?』
マリアの開かれた目に、ジョナサンが映った。
「見えているのか…?」
『ええ、ハッキリと…。不思議ね…、どうしてかしら…。』
ジョナサンがマリアの頬を撫でた。マリアはくすぐったそうに笑う。とても美しい笑顔だった。
「ジョジョ!その女からはなれていろッ!石仮面をかぶった以上、そいつも吸血鬼だ!」
「ダ…、ダイアー!?」
ダイアーと呼ばれた男は、ジョナサンをマリアから引き離した。マリアは自分がなぜ見えているのか分かっていないが、確かに石仮面をかぶったため、吸血鬼になったに変わりはない。マリアは首を傾げた。
『?ジョジョ、こちらの方々はお友達?』
「え、あ、いや…、」
『たくさんのお友達に囲まれてるのね、ジョジョ。』
微笑んだマリアに、ジョナサンは泣きそうになった。
「マリア、こちらに来い。」
『?』
ディオがマリアを呼ぶ。マリアは大人しくそれに従った。ディオはマリアを抱き寄せると、その顎を持ち上げ、マリアにキスをした。
「なッ、」
ジョナサンが目を見開き、波紋戦士たちも固まる。ディオは唇を放すと、とろんとした目のマリアの頭を撫でた。マリアはそのまま瞳を閉じて動かなくなった。
「眠り姫に目覚めのキスをするのは、どちらだと思う、ジョジョ。」
ディオは嗤った。
[ 32/34 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
眠り姫