怪人ドゥービーの巻

モンテス神父は宿の奥へ進み、食堂へと顔を出した。食堂では二人が談笑しながら食事を続けている。他に人がいないため、話に夢中になっているようだった。モンテス神父は、入口の壁をノックする。それに気付いた二人は振り向き、驚いた顔をして恥ずかしそうに笑った。

「お食事中失礼します、お二方。」
「こちらこそ、お見苦しいところを失礼しました、モンテス神父。」
「いいえ、楽しそうにお食事なさっているところを…。どうかお許しください。」
『モンテス神父、こんな時間にどうなされたんですか?』
「それがですね、マリアさんに会いたいとおっしゃるお方がおりまして、」
「まあ、もうこの町にマリアにファンが?」

メリーがくすくすと笑う。

「いやぁ、メリーさんのおっしゃる通り、マリアさんのファンだそうで、是非ともお会いしたいと教会にいらしたのです。」
『それは、大変ご迷惑を…、』
「いいえ、全く迷惑など!それで、直接会わせるのもどうかと思いましたので、本人に話してみましょうと、お伺いしたわけです。」
「でも、こんな時間に?」
「ええ、なんでも、明朝にはここを立つため、明日の演奏会に来られないと…。」
「それなら仕方ないわね…。マリア、行ってみたら?」
『で、でも…メリーは…?』
「私は平気よ!お邪魔にならないように、ここで待ってるわ?」
「私がエスコートさせていただきます、マリアさん。」
『…では、お願いします、モンテス神父。』

二人が食事を終えるのを待ち、メリーは部屋へ、マリアとモンテス神父は教会へ向けてでかけていった。メリーがこの後変わり果てた老婆の姿を発見し、恐怖する。それと同時に、モンテス神父にマリアを預けたことに後悔した。そして、彼女は宿を飛び出した。その後、メリーの行方を知る者はいない。



「それにしても、マリアさんのピアノの才能は一体いつから…?」
『さあ…、私にもちょっと分りません…。でも、父がピアノを勧めてくれなかったら、私はなにもできないただの女の子でした…。』
「それでは、そのお父様に感謝ですね。神も、きっとマリアさんの秘めた才能を開花させるために、きっかけを作ってくれたのでしょう。」
『ええ、そうだと信じてます。父にも、本当に感謝しています。』

暫く歩いたところで、マリアは疑問を覚えた。…おかしい。先日メリーと教会を訪れたときより、かなり歩いている気がする。

『…あの、モンテス神父、』
「なんですか?」
『…教会、過ぎてませんか…?』
「…、」
『あ、私の間違いでしたら申し訳ないのですが、メリーとあるいた歩数より、何だか幾分多い気がして…、』
「いいえ、あっていますよ?あなたにお会いしたいと申されている方がいらっしゃる屋敷へ向かっておりますので。」
『で、でも、それは教会で、』
「いいからついて来い。」

突然急変した神父に、マリアは恐怖を覚えた。渾身の力で神父を振り払おうとするが、神父は抵抗するマリアへ当て身をして気絶させると、肩に担いで歩みを進めた。視線の先には、ディオの潜伏している屋敷が見えていた。

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眠り姫



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