呪われた町の巻

「ねえ…、丘の上の墓地のそばの館に、人が越してきたのを知っとるかい?」
「ああ…、なんでも病人がおられて、療養にきとるそーな。それよっかあんた!知っとるけ?ハリーさんとこの娘、家出したそーな。」
「んー、聞いた聞いた。今時の若いもんは…ったく!…あ、そうそう、明日教会でピアノの演奏会があるって話はしっとるかい?」
「そういえばなんだか耳にした気がするねー。」
「なんでもね、盲目のピアニストが来るらしいんだよ、美人の。」
「はー…、そりゃ見てみたいね。」




老婆たちが噂していた館では、ジョースター邸での惨事で負った傷を癒しに、ディオが潜伏していた。

「んん〜、しだいしだいに力が蘇ってきた…。生命を吸えば吸うほど力がみなぎるッ!食物連鎖というのがあったな…草はぶたに食われ、ブタは人間に食われる。我我はその人間を糧としてるわけか…。人間を食料にしてこそ「真の帝王」…フハハハ、なあ?切り裂きジャック!」

ディオは切り裂きジャックへ視線を向けた。ジャックは持っていたナイフを、女の首元につきつけた。女は悲鳴を上げる。

「だが…、ジョースター邸の失敗はくりかえせん!事は慎重にやらなくてはな…。まず、あつかいやすい邪悪な人間だけを下僕とし、それから、この町の人間を!そしてロンドン!一気に世界を!この世を手中におさめてやる!すべての人間の頂点に立ってやる。生き血こそ力!永遠こそ望みッ!…幸いにも明日の夕暮れ、この町の教会でピアノの演奏会があると耳にした。町の人間のほとんどはそこに向かうだろう。その時がチャンスだ。」

ディオは目の前に座り込んでいた女の頭を握りつぶした。この日の晩、ジョナサンとツェペリ男爵、スピードワゴンの三人が、ウインドナイツ・ロットへ向けて出発し、ディオと再会する。そして、タルカスとブラフォードとの戦いで、ツェペリ男爵は無残な死を遂げてしまった。



一方、何も知らないマリアとメリーはというと、宿泊先の宿で遅めの食事を楽しんでいた。宿主は気前のいい老婆で、二人はすぐに打ち解けた。マリアとメリー以外に宿泊客がいないため、二人は老婆を誘って三人で食事をしていた。宿の戸を叩く音。老婆は席を立ち、戸を開けた。

「はいはい、こんな時間にどちら様。」
「失礼するよ、ご婦人。こちらに、明日の演奏会に出演するピアニストが宿泊してると思うんだが…、」

戸を叩いたのは教会の神父だった。神父はにっこりと老婆へ微笑みかける。

「あらぁ、モンテス神父…。ええ、ええ、お二人ならうちの宿に宿泊なされてますよ?ですが今、食事中でして、奥の部屋におられます。」
「そうですか、では、こちらで待たせていただいても?」
「かまいませんよ。今あったかいものをお持ちしますね。」
「お気遣いなく…、あなたの血でも飲ませてもらいますよ、ご婦人…。」

次の瞬間、モンテス神父の口が裂け、鋭くとがった牙が老婆の頭を噛み砕いた。ドサッ、と老婆の身体が倒れ、吹き出した血が床に広がる。

「…年老いた婆の血はまずいな…。」

モンテス神父は舌なめずりをし、元の顔に戻った。そして、奥の部屋へと進んでいく。何も知らない二人の笑い声を目指して。

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眠り姫



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