彼女の行方の巻

マリアは、ぶつけた肩の痛みが引いたころ、手探りで壁を探した。壁を見つけると、壁伝いに部屋を物色した。屋敷にあるベッドとは明らかに違うし、壁の感触も、窓の場所も、高さも、何もかも違う。マリアはとたんに孤独感に襲われ、壁に背を預けて声を押し殺し泣いた。その時、誰かが病室のドアをノックした。マリアが返事をすると、ドアは開かれ、誰かが入ってきた。

「マリア!目を覚ましたのね!」
『…その声、メリー…?』
「そうよ!あぁ、よかった…貴方が無事で!」

声の主は、マリアの大学の親友、メリーだった。メリーはジョースター邸での惨事を耳にし、毎日マリアの病室へ通っていたのだ。メリーはマリアに駆け寄る。

「まぁ、泣いていたのね…。」
『メリー…、』
「可愛いお顔が台無しよ、マリア…。」

メリーはマリアの涙をハンカチで拭き取った。そして、マリアを優しく抱きしめる。マリアはメリーの腕の中でまた涙を流した。

「マリア…、貴方のお家で起こったことは、新聞で読んだわ…?」
『…そう…。でも、私、家で何が起こったのか知らないの…。』
「そうなの?…聞きたい…?」
『…教えてちょうだい…。』

メリーは、新聞で読んだ内容をそのままマリアに話した。マリアは胸が締め付けられた。

「…私、看護婦さんを呼んでくるわ…。身体の何処にも異常はないようだし、きっとすぐに退院できるはずよ!マリアはここにいて!」
『…ええ。』

マリアはメリーにかりたハンカチで涙を拭きとると、静かに溜め息を吐いた。ジョナサンは大丈夫だろうか。生存者は、ジョナサンとマリアと、その場に居合わせた男性が一人、と新聞には書いてあったそうだ。ディオの名前が生存者としてのらなかったという事は、ディオは恐らく…。

「マリア!」
『…、』

メリーは医師を連れて戻ってきた。医師はマリアに異常がないか検査をすると、退院してもかまわないと言った。

「ねえマリア…、ジョジョはまだ目を覚ましていないそうよ…。」
『…そう。』
「…うちに来ない?」
『…え?』
「ジョジョが目を覚ますまでの間、家で過ごしましょう?」
『…いいの?』
「もちろんよ!」

メリーはマリアの両手をとって、握りしめた。

『…ありがとう、メリー…。』

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眠り姫



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