懐かしき面影の巻

マリアが目を覚ましたのは、ジョースター邸での惨事が落ち着いた2日後だった。静まり返った病室。しかし、マリアは今自分がどこにいるのか分からない。ゆっくり起き上がると頭がふらふらと眩んだ。

『ここ…は…?』

手探りで杖を探すが、バランスを崩してベッドから転がり落ちた。

『…痛い…、』

マリアは床でぶつけた肩を抱きしめる。生まれて初めて独りぼっちになった。




マリアが目を覚ました翌日。スピードワゴンはジョナサンとマリアが入院する病院へ来ていた。

「いま!あの二人はまったくの孤独!実の父親を亡くしたジョースターさん。実の兄が化け物になったうえに、焼け死んだマリアさん…!あの二人には心のささえがねえ!こんなオレじゃあ役不足だがよォ!ほんのチョッピリでも与えてやりてえ!生きる希望をよォ!意識不明でも手をにぎってやるだけでも、それは伝わるもんだぜ!」

スピードワゴンはジョナサンの病室へ訪れた。

「たしか、ここが病室だったな。」
「なにか…、この部屋は面会謝絶です。」
「め…、面会謝絶!おれは、だからこそ来た!会いたい!!おれは彼の友人だ。会う必要がある!!」
「看護はわたくしどもが十分やっております。後日いらしてください…。」

スピードワゴンの入室を拒んだ看護婦は、そのままドアを閉めてしまった。

「開けろッ!看護だとッ!技術はまかせる。どうでもいいんだ!!心だ!あの人には今、心が必要なんだッ!!」

スピードワゴンはジョナサンの部屋を諦め、マリアの部屋を目指した。




「マリアさん、起きてるかい?」

スピードワゴンはドアをノックする。中から返事はない。…嫌な予感がした。恐る恐るドアを開けるスピードワゴン。

「…!」

そこは、蛻の空だった。

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眠り姫



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