食屍鬼街の戦いの巻

マリアはそれから毎日、自分の部屋にこもっては泣いていた。3日ほど前、ジョナサンが部屋に来て、2、3日家を空けてロンドンに行くと言って出ていった。理由は、ディオがすり変えていた薬の正体を突き止めるためだ。マリアはそれを上の空で聞いていた。もし、あの薬が毒薬だという証拠が出た場合、兄はどうなるのだろうか。殺人未遂で捕まってしまうのだろうか。そうなると、大好きな兄と離ればなれになってしまう。マリアは兄が大好きだ。それが恋愛感情かはわからない。しかし、ずっと兄を慕ってきた。

『…頭が痛いわ…。』

泣き腫らして赤く腫れた目元。泣き続けて痛みだした頭。やがてマリアは吐き気を催し、動くのが億劫になった。ベッドに横になる。マリアは5時間も眠っていた。外は日が暮れて来ている。しかし、夕焼けがマリアの目に映ることはない。マリアは召し使いを呼び、シャワーを浴びた。ピアノが弾きたくなった。マリアはピアノの部屋へ向かう。そういえば、今度の演奏会で演奏しなくてはならない曲があるのだ。マリアは頭の中でメロディを思い浮かべる。マリアは聞いたメロディや曲を一度で覚えることが出来た。細く長い指を鍵盤に重ねる。いざ弾き始めようと息を吸い込んだ時だ。

「マリア、」
『…ジョジョ…?』
「ああ、ただいま。今帰ったよ。」
『お帰りなさい。』
「…ディオはいるかい?」
『…お兄様なら出かけてるって、召し使いたちが言ってたわ。私、つい先ほどまで寝ていたの。』
「ジョースターさん、こちらのレディは?」
「あぁ、マリアだ。ぼくの妹だよ。」
『…お客様?ごめんなさい、私目が見えなくって、わからなかったわ。』
「マリアさんっていうのか。おれはおせっかい焼きのスピードワゴン!目が見えないなら気付かないのもしかたねえ!おれは気にしちゃあいねーぜ、マリアさん。」
『ありがとう、スピードワゴンさん。』
「マリア、練習の邪魔して悪かったね。ぼくたちは広間にいるから、好きなだけ練習しているといいよ。」
『ええ。』

二人が部屋を出ていったのを聞き届け、再びマリアは鍵盤に指を重ねた。呼吸を整え、沈む鍵盤は重く、低く。空は夕暮れから暗がりへ、黒雲を運び雷が響いた。マリアは無我夢中で鍵盤を弾く。重苦しい曲だ。まるで今のマリアの心の蟠りを表現した曲に、マリアは泣きそうになった。

「ジョースターさん…、」
「マリアはディオの血の繋がった妹だ…。だからといって、ディオを警察に突き出すところを見せたくはない…。」
「…しかし、兄妹の別れってもんも…、」

ジョナサンは、部屋から漏れるピアノの音に、震える拳を握りしめた。

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眠り姫



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