父への誓いの巻

その夜、マリアはジョージの部屋で大学の話をしていた。メリーという親友の話。授業での話。大学での出来事など。ジョージはそれを優しい目で見つめる。

「そうか…。いい友達を持ったじゃあないか、マリア。」
『はい!』

それから二人は談笑を終え、マリアは自分の部屋へ戻っていった。部屋へ戻る途中、誰かが口論する声が聞こえた。マリアは声のする方へ向かう。壁伝いに早足で歩き、曲がり角を曲がろうとした時だ。

「ジョジョ!薬をもどせッ!そして手紙を渡すんだァーーーッ!」
「君への疑惑が確信に変わったぞッ!ディオ!君の動揺と憎悪は普通じゃない!君と実の父親の間に何があったのかは知らんが、君は父親を殺害しているッ!」

『!!』

マリアは立ち止まる。父…ダリオ・ブランドーの死は、ディオが殺害したから…?マリアは訳がわからなくなった。マリアは、失明してからずっと屋根裏部屋で過ごしていた。それ故、普段のダリオとディオのやり取りを耳にすることがなかった。ディオがダリオを殺害する動機なら、すぐに浮かんだ。簡単だ。母に苦労を掛けた事、母の死、自分達への暴力、そしてマリアの失明…。マリアはディオの言葉を思い出す。ダリオの死を告げるディオは、とても嬉しそうだった。

『う…そ…、』

ディオがダリオを殺害していた事実に、マリアは息が止まる。

「ぼくは父を守るッ!ジョースター家を守るッ!マリアをこれ以上、君と共にいさせるわけにはいかないッ!たとえそれが血の繋がった兄妹だとしてもだッ!」

『!!』

ジョナサンの言葉に、マリアは涙を浮かべる。大好きな兄が父を殺した。大好きな兄は人殺し。そしてさらに、新しい父にまで手を掛けようとしている。マリアの瞳から涙が零れると同時に、ジョナサンはディオを持ち上げて突き飛ばした。

「うわあッ!」
「君の7年間の考えがわかった!ぼくらには最初から友情などなかった!そして、父にはもう近づけんッ!この薬を分析して、必ず刑務所に送りこんでやるぞッ!」

マリアはふらつく足取りで自分の部屋に戻った。ベッドに座り、そのまま横になって体を沈める。隣の部屋からドアがノックされた。返事をする気になれず、そのまま寝たふりをする。ドアが開けられ、ディオが部屋へ入ってきた。

「マリア…、」
『…、』
「…マリア、聞いていたんだろう、ぼくとジョジョの会話を…。」
『…、』
「…マリア、おれはお前を守るために、」

ディオがマリアに手を伸ばす。マリアはそれを払い落した。ディオが目を見開く。マリアは涙を浮かべてディオに手を伸ばすと、震える手でディオの胸を殴った。弱々しいパンチだった。

『お兄様のばか…!』
「マリア、」
『人殺しなんて…、お母様が悲しむことを…!どうして…、どうして私に話してくれなかったのですか…!二人で家を出ようって約束したじゃない…!』

ディオは何も言わず、弱々しいパンチを受ける。

『私が目が見えないから?!私が足手まといだから?!私が…!私は…、私は…お兄様が大好きだったのに…。』
「…マリア…、おれは、」

ディオはマリアの涙を拭おうと手を伸ばした。しかし、ディオはその手を引っ込め、何も言わず自分の部屋へ戻った。マリアの泣く声だけが部屋に響いた。

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眠り姫



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