愛しのエリナの巻
それからというもの、ジョナサンはディオがいない時を見計らってマリアの元へ遊びに来た。外へ出た事のないマリアは、ジョナサンから聞く外の話に憧れ、やがてその憧れはジョナサンへ向けての憧れへと変わっていった。
「それで、その女の子、ぼくのハンカチとブドウをかごに入れて去っていったんだ。一言も言わなかったから、名前はきけなかったんだけどね?」
『ジョジョってば、勇敢なのね!素敵だわ!』
「へへ、そうかな…?」
『その女の子も、きっとそう思ったはずよ!』
しかし、マリアはそれが恋心だということを知らない。
『いいなぁ…、私も外に出てみたいわ…、』
「出ればいいじゃないか!」
『でも、お兄様がだめって言うから…。』
「…でも、」
『お兄様は私の為を思っていってくれるから、』
マリアは少しだけ悲しそうに笑った。
その夜、ディオは風呂上がりのマリアの髪をタオルで優しく拭きながら口を開いた。
「マリア、今日は何をしてたんだい?」
『今日はピアノのレッスンの後、ジョジョと少しお話したの!』
「…ジョジョと?」
『ええ!外の話を聞いたの。』
「…へぇ、どんな話だい?」
マリアは、昼間ジョナサンに聞いた話を楽しそうにディオに話した。それがまさか、ジョナサンと女の子―――エリナを引き離す原因の一つになる事も知らずに。
「それはとても、興味深いね。」
ディオは今、邪悪な顔をしている。
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眠り姫