吉良吉影と受付嬢

長い勤務も、気付けばお昼。…何を食べよう…。




吉良吉影と受付嬢
 Part 3 昼休みとサンドイッチ




サンジェルマンのサンドイッチを食べると意気込んでいた枢が、メールの受信をバイブで知らせた携帯を見てすぐ、私に、先にお昼を食べて来てと言った。メールの内容は兎も角、あんなに食べたいと言っていたサンドイッチをみすみす食べ逃す様な事をしてもいいのだろうか?と、思ったが、枢の言葉に甘えて先にお昼を頂く事にした。財布片手に会社のロビーを出ると、目の前の信号は赤。

『…お腹空いたぁ…。』

何食べようかなぁ…。…枢が食べたがってたサンドイッチを買って帰ろうかなぁ?とか、頭の中で一人考えていた時だった。

「…やあ、」
『…え?』

誰かに話し掛けられ、驚きながらも振り返った。

「確か、受付の名字さん…だったかな?」
『…え、と、そうです…けど…。』

振り返ると、何処かで見た気がする整った顔の男性。う…、イケメン…って奴ね…?!

「ああ、すまない。営業部の吉良吉影いうものだが…。」

…ん?吉良、吉影…?何処かで聞いた気が…する。…あれ…、そう言えば、この人の顔…見たことある…?…あ!今朝枢が言ってた、うちの会社で一番のイケメンって人だ!!

『…は、はい。存じてます…。えっと、何か…?』

で、でも…私、吉良さんに何かしたっけ…?話し掛けられる様な事をした覚えもないし、況してや、今日初めて吉良さんの存在を知った女ですけど…!

「…いや、どうやら君もお昼に行くようだから、一緒にどうかな、と思ってね…。…ああ、嫌ならいいんだ。いきなり声を掛けてしまって悪かったね。じゃあ。」
『え、ちょ…、』

ま…、待って…!い、今…私とお昼を一緒にって言った?!う、嘘…!どうして、全くと言っていい程関わりの無かった私に…?で、でも…せっかく誘って頂いたのに、断ったら失礼だよね…。よ、よし!

『き、吉良さん!』
「…ん?」

名前を呼べば、数歩先で立ち止まった吉良さん。私は彼の元に走り寄った。

『あ、あの…、一人でお昼食べるのも、何か寂しかったので…その、一緒に…、』
「…いいのかい?」
『…は、い…。』

頷いたはいいけど…、ど、どうしよう…!

「じゃあ、行こうか。」

吉良さんは私の背中にそっと手を添えて、紳士がエスコートするように私の左手をとった。

『…っ、と…、き、吉良さん…、』
「何かな…?」
『こ、これは…一体…、』
「…あぁ、すまない。」

離れたのは背中に回っていた手だけだった。とられたままの左手を、吉良さんの右手が優しく撫でる。

「綺麗な手だと…、思ってね…。」
『…あ、ありがとう…ございます…。』

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