吉良吉影と受付嬢
そして私は、携帯の電話帳を開く。夕飯にはラップを掛けて、冷蔵庫に入れた。目的の人物の番号を見つけて、通話ボタンを押す。
【…もしもし、】
『もしもし、吉良さんですか?』
【…ああ、名字くんか。どうしたんだい?】
『…何だか、吉良さんに会いたくなって…。』
【…嬉しいな。僕も今そう思っていた所だよ。…どうかな、名字くんさえ良ければ、今からバーにでも行かないか?】
『…はい、喜んで…。』
【今から君の家に迎えに行くよ。教えてくれるかな。】
『―――の前にあるアパートの…、』
そう、これで…いいの。これでいいんだから。
<ピーンポーン>
「こんばんは、名字くん。」
『こんばんは、吉良さん。』
「さ、行こうか。」
私は、もう、大丈夫。だから、心配しなくていいんだよ、ハイドアンドシーク。
「思っていたんだが、僕ら、良い仲だと思わないかい?」
『…え?』
バーに向かう車内。吉良さんに握られた手。
「相性がいいって言っているんだ。君と僕の。」
赤信号で停車した車。見つめ合う私と吉良さん。
『…私、吉良さんに会えてよかったと思ってます。』
握り返した手は暖かい。
「…ああ、僕もだ。」
『…私、吉良さんと一緒にいると、胸がドキドキして、とても幸せな気分になるんです。それに…、』
「それに?」
『一目惚れ、してました。あなたに。』
ピクリと反応する手。
『好きです、吉影さん。』
「僕もだ、名前…。」
信号が変わるまで、私たちは長い長いキスをした。
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