吉良吉影と受付嬢

二人の死体を処理したあと、僕は着ていた服の裾を捲り上げて、シャワーノズルを手に取った。シャワーの蛇口を捻り、壁やタイルに付着した血液を洗い出していく。浴槽の栓も抜き、溜まった血液が排水溝へと流れる様を見届けて、置いてあった浴室用洗剤とスポンジで綺麗に洗い落とした。掃除も終えて、名字名前のいる部屋に戻ると、彼女は落ち着いた様子で大人しく座っていた。

「…もう大丈夫だ。僕が片付けておいたよ。」
『吉良さん…、私…、』
「何も言わなくていい。今日は僕の家においで。この部屋じゃあ落ち着かないだろう。」
『…はい。』

名字名前は素直に従った。鞄に、着替えと服を詰めている。僕の家に呼んだのはいいが、布団はあっただろうか。まぁ、なければ一緒に寝るか…。…いや、まだ早い。もう少しなつかせなければ。…待てよ、彼女の手を手に入れるいい機会だッ!これはいい!今夜、うちであの手を頂くとするか。

「行こうか。」
『はい…。』

名字名前の荷物を取り、彼女の右手を握る。あぁ、本当にいい手だ。柔らかくて手触りもいい!ずっと触っていたくなる!早くッ!早くこの手が欲しいッ!!!

『吉良さん…、』
「ん?」
『あの人達、誰なんですか…?私、全然覚えがなくて…、怖くて…警察も呼べなかった…。』
「大丈夫だ。警察の必要はない。僕が守ってあげるさ。」
『吉良さん…。』
「…こんな時になんだが…、僕ら、良い仲だと思わないかい?」
『…ぇ?』
「相性がいいって言っているんだ。君と僕の。」
『…私、吉良さんに会えてよかったと思ってます。』
「…ああ、僕もだ。」
『…私、吉良さんと一緒にいると、胸がドキドキして、とても幸せな気分になるんです。それに…、』
「それに?」
『一目惚れ、してました。あなたに。』

名字名前は、車を運転する僕の膝に手を置いた。危ないじゃあないか…、興奮してしまうよ。

「…じゃあ、僕たちは晴れて恋仲というわけでいいかい?」
『…はい。』

そんな関係、すぐに君の気持もなしになってしまうがね。家に着くと車から降り、名字名前を家の中に招いた。

『お邪魔します。』
「どうぞ。」

居間に通すと、彼女を座らせ、台所に向かう。グラスを二つ取って、冷蔵庫から出した麦茶を注ぐ。…そう言えば、彼女はまだ夕食を食べていなかったはずだ。

『…あ、お気遣いなく…。』
「いや、もう遠慮する仲じゃあないだろう?」
『…ありがとう、吉良さん。』
「…そう言えば、食欲の方はあるかい?夕食はまだだったろう?」
『…いいえ、今は…、』
「…なら、サラダはどうだい?流石に何も食べないのは健康に良くない。」
『…はい、じゃあ…いただきます。』
「…敬語はやめてくれよ。」
『は、…うん。』

確か、冷蔵庫の中に、今夜の夕食で余ったポテトサラダがあったなと思いながら、名字名前の前に麦茶の入ったグラスを置いた。

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