吉良吉影と受付嬢

名字名前の住むアパートに着き、携帯を鳴らす。すぐに出た彼女に部屋を聞くと、言われた部屋に直行した。鍵は開いているとのことなので、遠慮なく部屋に上がる。玄関で靴を脱いで中に入ると、部屋の隅で携帯を片手に縮こまって震えている名字名前がいた。

「大丈夫か?」
『…ぁ、ハッ…ふっ…吉良さん…ッ!』
「…もう大丈夫だ…。」

かなり怖かったのか、僕に抱き付いてきた彼女を受け止め、落ち着かせる為に優しく背中を叩いた。

『うっ…ふっ…、ぅぁっ、はぁっ…、』

嗚咽混じりに涙を流す名字名前をその場に座らせると、部屋を見て回ろうと見渡した。テーブルに置かれた料理はとっくに冷めてしまっている。部屋を物色するが、この部屋には何も異常がない。

『…うっ…げほっ、浴室に…、』
「浴室…?」

言われた通り浴室を見に行く。少し開かれたままのドアの向こうに見えた白い何か。ドアを開け放つとそこには、

「何…ッ?!福富枢と…、山崎梓…だと…ッ!?」

真っ赤な浴槽に浮かぶ二つの顔。見覚えのある顔に、僕の額に汗が浮かんだ。この真っ赤な浴槽は…、なんだ…?!靴下を脱いで浴槽の前に立つ。水面に指を這わせると、少しベタついた感触。漂う臭い。…間違いない。

「血…、」
≪だれ…だれ?≫
「…ッ?!」

コトッと、後ろから軽い物が落ちる音がした。振り返ると落ちていたのは黒い箱。

「何だ…?まさか、スタンド…ッ?!」
≪ハイドアンドシーク≫

コトコトと音をたてて箱を揺らしながら、大きな人型の女のスタンドが箱の中から這い出てきた。

≪ハイドアンドシーク…。わたしのなまえ。あなた、ますたーのおに?≫
「鬼…?」
≪わたし、かくれんぼする≫
「かくれんぼだと…?」

ゆらゆらと近付いてくるスタンドに、キラークイーンを構えようかと迷ったが、このスタンドに攻撃すれば、名字名前の手を傷付けてしまうかもしれない。ここは何もしてはならない。いや、彼女のスタンドに手を出してはならない!

「僕は君のマスターとやらの味方だ。この死体を処理しにきた。」
≪…≫
「今から僕は、自分のスタンドを出すが、決して君や君のマスターに攻撃するわけではない事を分かってくれ。」

キラークイーンを構える。キラークイーンで浴槽に浮かんだ二人の腕を掴み、引っ張りあげると直ぐ様二人の身体を爆弾に変えて消し去った。

≪ますたーのおにが…!≫
「いいんだ。これで彼女はびくびくしながら生きていかずにすむ。」
≪かくれんぼできない…≫
「彼女が望めばするといい。…僕は鬼にしないでほしいがね。」

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