吉良吉影と受付嬢

昼休みも終わりに近付いたため、私たちは公園で別れた。吉良さんは少し電話してから会社に戻るそうだ。そして、会社に戻った私は、受付を任せていたこと交代し、再び勤務に戻った。

『…あれ…?これ、誰のだろう…。』

私の座っていたデスクの奥に押し込まれていた袋。これは…、サンジェルマンのサンドイッチだ。中を開けてみると、つん、と鼻につく臭いがした。覗くと、サンドイッチに巻かれたラベルに書かれた賞味期限は、昨日。

『…もう食べれないし、捨ててもいいよね…?』

デスクの下に置いてあるごみ箱に、サンドイッチの袋を捨てた。ゴミ箱の中身は、帰る前に集めて捨てるので問題はない。

『よし。』

椅子に座ったまま、ぐっと背伸びをすると、午後からの勤務に取り組んだ。



『ふぅ…。』
「名字さん、お疲れ様。コーヒー置いとくわね。」
『あ、ありがとうございます!』
「じゃあ、お先に!」
『お疲れ様です!』

勤務時間も終わり、デスクの片付けも終わった。帰り支度を整えて、会社を出る。そう言えば昨日、買い物をして帰るのを忘れていたので、スーパーに寄った。今日の晩御飯は何にしよう。…魚…。魚食べたいな…。うーん、鮭のムニエルにしよう。などと一人で考えながら、魚コーナーに向かう。鮭を買って、他にも必要な食材をかごに入れ、会計をする。スーパーを出ると、空には満月が浮かんでいた。家に帰ると、買った食材を冷蔵庫にしまい、ラフな家着に着替えた。

『よし、お腹空いたし、ご飯ご飯。』

包丁を取ろうと棚を見た。

『…あれ、包丁…どこにやったっけ?ここに直してたと思ったのに…。…ま、いっか。もう一個あったし。』

もう一つ呼びに置いてあった包丁を手にとり、まな板と一緒に洗ってから調理に取り掛かった。野菜を切り、サラダを作った後、鮭の調理に掛る。フライパンに油を少しとバターを敷いて、鮭を焼いた。ジュージューと焼ける音と、香ばしい臭いが漂う。焼いている間に、サラダを盛り付けた。暫くして料理も完成し、テーブルに料理を並べ終わった時だった。

≪もういいかい≫
『…え?』
≪もういいかい≫
『…えっと、ハイドアンドシーク…だっけ?』
≪もういいかい≫
『…もういいよ…?』
≪もういいの?≫
『…う、うん…。』

昼間聞いた声が聞こえた。驚く暇なく、目の前に黒い箱が浮かんでいた。もういいかいと聞かれた。昼間はまだだよと答えた。…ならば、もういいよと答えれば…?

≪もういいかい≫
『もういいよ。』

ドサドサッ、…と、何かが落ちる音がした。音は…そう、少し離れた所。あの方向は…浴室…?気になった私は浴室に向かった。でも、何だか怖くなった。ぞわぞわと脚先から頭の先にかけて、黒い影が這うように、もやもやとする。なんだか…嫌な予感がする。

『…ハァ…、ハァ…、』

脚が震えて、呼吸も乱れてきた。なに?なに?!すごく怖い…どうして、なにが、なにが怖いって言うの…!?浴室のドアを開けた。そして…、

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