吉良吉影と受付嬢

「もういいかい」と、声がした。「まだだよ」と言い返した。




吉良吉影と受付嬢
 Part 7 スタンド名:『ハイドアンドシーク』




会社に向かい、制服に袖を通す。私が着替え終わる前に、枢が更衣室に入ってきた。

『おはよう、枢!』
「…うん、おはよ…。」
『…どうしたの?すごく顔色悪いけど…。』
「…へへ、なんか、怖い夢見ちゃって…。」
『…大丈夫…?』

どんな夢だったのか気になったけど、もうすぐ勤務時間が始まる為、急いで更衣を済ませて枢と一緒に受付ロビーに向かった。

『おはようございます!』
「…おはようございます…。」

まるで、昨日の朝の私みたいに、呆然と立って挨拶をする枢。でも、あれ…?私、どうして昨日の朝あんなに落ち込んでたんだっけ…?…ま、いっか。

「…おはよう。」

あ、吉良さんだ…!挨拶をしたら、吉良さんと目が合った気がした。そして、その数分後、ロビーの奥にあるエレベーター乗り場の方で、男性の悲鳴が聞こえた。周りが静まり返った。…誰だろう…、聞いたことある声だった気がする…。

「…ぁ、ずさ…?」
『枢?』
「…ぁ、な、何でもない…!」

悲鳴を聞いて、さらに顔を悪くした枢。…本当に大丈夫だろうか…?それから、通勤ラッシュも終わり、受付の仕事に取り掛かろうとした時だった。人が少ないことをいいことに、枢は口を開いた。

「…きょう、変な夢見たの…。」
『変な夢…?』
「…うん。…あ、のね…、私、変な箱の中にいたの…。」
『…箱…、』
「それで、その箱の中にサンドイッチがあったの…。あの、サンジェルマンのサンドイッチ…。」
『…、』
「それと、破けたストッキングと…、包丁が一本落ちてて…、それで、手と膝に痛みを感じて見てみたら、見覚えのない傷があったの…。」
『…本当に変な夢ね…、』
「…そう…、でも、まだ続きがあって…、その箱の中で目が覚めたの…。」
『…どういうこと?』
「…何というか…、箱の中で夢を見てて、目が覚めたと思ったら夢と同じ箱の中にいた…みたいな…。」
『…成程…。』
「それで、夢の夢を見てたみたいで、でも同じ箱の中にいるの…。そしたら、後ろで何かが落ちる音がして…、見たら…、」
『…見たら…?』
「増えてたのよ…、サンドイッチとか、包丁とかが…!」
『えぇ!?』
「そしたらまた眼が覚めて、また同じ箱の中で…、また音がして、振り向いたら…、やっぱり…、」
『同じものが増えてたの…?』
「…ぅ、うん…。それに…、手と膝の痛みが増してて、見たら…、傷が増えて酷くなってて、血が…、ぅ、は…、」
『…大丈夫…?今日はもう早退させてもらったら?』

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