吉良吉影と受付嬢

清々しい朝だ。




吉良吉影と受付嬢
 Part 6 違和感




昨日は会社に戻った後、いつも通り静かに仕事を終えて帰宅した。いつも通りに就寝したが、一つだけ、いつも通じゃあない点を挙げよう。昨日、布団にもぐってからだ。不意に、名字名前の手の事が頭に浮かんだ。あの綺麗な手が、頭から離れなかった。…はやく、あの手を手に入れたい。考えるだけで興奮してしまい、昨日はついつい自慰をしてしまった。自分の手ではそれほど興奮できないはずが、彼女の手の事を考えると、いつも以上に興奮してしまった。あのふんわりと柔らかい手で、あの細長い指を絡めて、僕自身を触ってほしい…そう思いながら、自慰に耽っていたのだ。

「…ふう…。」

洗面所で歯を磨いた後、顔を洗い、綺麗なタオルで水分を拭き取った。台所へ向かって、朝食を作って独りで静かに食べた。もう一度歯を磨き、スーツにそでを通して家を出る。会社まで車を飛ばし、社員用の駐車場に止めた後、いつも通り会社に入った。ここまでも、いつも通り。だが、会社はいつも通りではなかった。

『おはようございます!』
「…おはようございます…。」
「…おはよう。」

受付嬢の名字名前と福富枢だ。名字名前の元気なあいさつに比べ、昨日元気に笑顔を振りまいていた福富枢の顔色が優れない。声にも覇気がなく、今にも倒れそうなほどだ。しかし、そんなことを気にしている暇もない。エレベーター乗り場へと向かった。

「…あ、吉良先輩…、おはようございます。」
「…?ああ、おはよう。」

僕に挨拶して来たのは、山崎梓だ。…彼も、何処か優れない顔色で、福富枢同様、声に覇気もなく、眼元には隈が出来ていた。

「…随分と顔色が優れないようだが…。」
「…ああ、何か…、変なもの見ちゃって…。」
「…変なもの?」
「…話し、聞いてくれますか…?」
「…じゃあ、お昼休みにでも聞こう。しかし、本当に大丈夫かい?」
「…まあ、何とか…。」

エレベーターの扉が開いた。

[ 14/31 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]

500円



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -