吉良吉影と受付嬢

突然の事だった。エレベータの扉が開き、乗り込もうと僕と山崎君が正面を向いた時だ。

「ひぃっ!うあ、うああわああああッ!!!!!」
「!?」

エレベーターの中から、大量の血と思われる、赤い液体が流れてきたのだ。山崎君が悲鳴を上げる中、他の社員たちには“ソレ”が見えていないのか、山崎君を見て首を傾げている。…まさか、スタンド使いがいるのか…?と、思ったが、山崎君だけにこれが見えているため、彼がスタンド使いという可能性もある…。僕はキラークイーンを構えて、山崎君の肩を掴み、自分の方へ顔を向かせた。

「山崎君、大丈夫かい?」
「せ、せんぱ…、エ、エレベーターが…!血、血がいっぱいで、わ、訳わかんね…、」
「…落ち着きなさい。エレベータに何も異常はないぞ。」

山崎君と目を合わせるが、彼が僕の背後にいるキラークイーンに気付くことはなかった。と、言うことは…、だ。彼はスタンド使いではない。ならば、なぜ、彼が見たエレベーターが血まみれだったのか。僕にもそれが見えたのか…。

「山崎君、とりあえずこっちに…。」

全く、僕は静かに暮したいというのに…迷惑な話だよ。山崎君を連れて男子トイレに向かう。手洗い場で、彼に顔を洗わせた。きっと、変な夢を見ているんじゃあないか、とでも言って。

「…せ、先輩…、俺…、俺…、ゆ、夢見たんです。すっげえ怖い夢で…、」

彼は話し始めた。

「俺…、目を開けたら、血の海に浮いてたんです。」
「血の海…?」
「でも、なんか、変な…箱みたいなところで、そこ。そこに血の海があって、俺が浮いてて…、」
「…どういうことだい、つまり。どうして、そこが箱の中だと…?」
「か、角があったんです。正方形で、人が一人入れるくらいの大きさで…、そこに、俺が浮いていた…。」
「…。」
「それで、声が聞こえたんですよ。…「もういいかい?」って…。そしたら、どっからか、また別の声が聞こえて、「まだだよ」って…。お、俺、…訳判らなくなって、そこで気がついたら、夢だったんすけど…、」
「かくれんぼみたいな会話だな。」
「…そうなんすよ…。で、気分悪くなって、顔洗おうとして水道の蛇口捻ったら…、」
「…捻ったら…?」
「…血、血が…、あ…、ぅ、え…!」

山崎君は口元を押さえて、奥の個室に籠ってしまった。水を流す音と、山崎君の嗚咽の混じった声、咳が聞こえたと思いきや、彼はまた絶叫した。急いで彼の入った個室の前に行くと、泣きながらブツブツと何かを呟いてる声が聞こえた。

「…うっ、は…っ、もう、やめてくれよ…、ううっ、ま、また…、声が…!」

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