太陽

まるで燃えたぎる炎の前に立っているような状況に、サソリは乾燥して風化してしまう。ラクダも暑さに倒れ始め、一行も滝のように汗を流していた。

『ハァ…、ハァ…、』
「大丈夫かい、春乃妹…?」
『…頭が…ふらふらする…、』
「熱中症になるのも無理はないじゃろう。急いで本体を探さなければ…!」
「じっとしていてもしょうがないッ!ぼくの「法皇」でさぐりを入れてみるッ!」
「花京院ッ!」
「敵「スタンド」の位置をみるためだけです。どの程度の距離にいるのかわかれば…、本体がどこにいるかわかるかもしれないッ!」

そう言って、花京院は法皇を宙に飛ばした。100メートルに達した時だ。

「なにかやばい!花京院「法皇」を戻せ!」
「なにか仕かけてくるぞッ!」
「その前に、エメラルド…、うげッ!」

エメラルドスプラッシュを放つ前に、太陽から光線のレーザーが放たれた。法皇の緑はそれを間近で受けてしまい、花京院の額からは血が流れた。

『お兄ちゃん…!』
「花京院ッ!」

レーザーは、近くに力無く倒れていたラクダの体を撃ち抜いた。

「うおおおおお、野郎ッ!」
「おらあ!」

ポルナレフがレーザーを弾き、承太郎はスタープラチナで地面に穴を開けた。穴の中に避難した一行。春乃妹はすぐさま花京院に涙の壺を出した。

「だいじょうぶか花京院…。」
「ええ…、エメラルドスプラッシュを半分出しかけていたのでそれがガードになって軽傷ですみました。」

花京院は額を押さえる。

『お兄ちゃん…、』
「ああ…、ありがとう春乃妹…。」

そこで春乃妹はふと気付いた。以前までは、自分の片割れであり、良き理解者である花京院が怪我をすると、まるで自分のことのように悲しくなって、涙を流していた。しかし、今はどうだろうか。旅を始めてから、怪我や血、死への恐怖に慣れ始めてしまっている。これはとても恐ろしいことだ。

『…どうして…?』
「…春乃妹…?」
『…な、んでもない…。』

キュッと心臓が掴まれるような感覚。それから、まるで別の生き物の心臓かと思わんばかりに心拍数が上がってきた。

『ぅっ…ふっ…、はぁっ…、』

苦しくなった胸を押さえていると、ポンっと頭に何かが乗った。見上げると、そこにいたのは承太郎だ。そして、承太郎の大きな手が、自分の頭を優しく撫でている。

「…大丈夫か?」
『…承太郎…、』

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涙の壺



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