太陽
その後、二人のいる場所に戻ってきた三人。承太郎と春乃妹は、サッと繋いでいた手を解いた。春乃妹は涙の壺を出し、承太郎の怪我を治し始める。花京院が春乃妹に駆け寄る。
「春乃妹、何もされなかったかい…ッ!?」
『…ぁ、…平気…。』
「…本当に?」
『…平気…。』
「…頬が赤いが…、」
『…そ、れは…、』
「ダンの野郎に叩かれた。奴なら、おれのオラオラでその辺に吹っ飛んでやがるぜ。」
「…ありがとう、承太郎。ちょっと僕もやり返して来てもいいかな?春乃妹の綺麗な肌を叩くだなんて、許せないからね。それに、さっき承太郎を庇って殴られた傷も…。」
花京院は怪しい笑みを浮かべながら、ダンを探しに行った。
「…過保護度が増してやがるぜ。」
『…ありがとう、承太郎。』
「…ああ。」
『…傷は…平気?』
「ああ、お陰さまでな。だが、もう俺達を庇って傷付くような真似はやめろ。俺たちはそこまでやわじゃねぇ。それに、女に庇われる俺たちの気持ちも考えろ。惨めだぜ。」
『…ごめんなさい。』
「…分かればいい。おめー、自分の傷はもう治したか?」
『え…、あ…うん。今から…。』
春乃妹は、壺を抱えて飛び回る涙の壺を抱き寄せた。心配そうに春乃妹を見上げる涙の壺。
「…さっきの、ダンの野郎が言ってたことだが…。」
『!…うん。』
「…俺もオメーも、恐らく思ってることは一緒だ。だが、この旅の間に伝えはしねー。旅が終わったら、俺から言う。それまでこのことは忘れろ。」
『…うん。…約束?』
「ああ。」
二人は小指を結ばせた。遠くで、花京院がエメラルドスプラッシュを放つ音がしたが、そこには触れないでおこう。
それから、一行の傷を治し終えた春乃妹は、涙の壺の持つ壺を覗き込んだ。
『…あと、少ししかない…。』
サァッ、と血の気が引いた。この調子では、皆の傷を治すための涙が無くなってしまう。しかし最近、昔のように頻繁に泣くことはなくなった。先程も、流した涙はダンが舐めとったため、壺に収めることはできなかった。
『…どうしよう…、私…、』
春乃妹はその場にしゃがみこむ。不安で胸が押し潰されそうだった。もし、次に出会うスタンド使いとの戦闘で、涙を使い果たしてしまったら?自分の役目は何もない。ただのお荷物になってしまうだけである。
『…ぁ、…うっ…、ふっ、ぅ…、ふぅ…、』
グッ、と肺が潰れそうなほど息ができなくなった。くらくらと視界がぶれてしまう。
「…春乃妹?」
『…ッ、』
「おい、どうたんだ?」
『…平、気…。』
春乃妹の以上に気付いたポルナレフが声を掛ける。それにハッとした春乃妹は、ゆっくりと深呼吸をして、またゆっくりと立ち上がった。
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涙の壺