正義
「…ハァ…。」
承太郎は溜め息をつき、ベッドで眠る春乃妹の寝顔を眺める。余程具合が悪かったのか、その顔は青白い。
「…どうしてさっき言わなかった…。」
承太郎の呟きに、眠った春乃妹は答えない。
「この俺が心配してるんだぜ…。、花京院にあんな事言っておきながらな…。」
白く細い手を取る。その手は少し温かかった。力を込めれば折れてしまいそうな小さな手に、承太郎は小さな笑みが零れた。初めて自分が人を護りたいと思えたのは、きっと母であるホリィと、この春乃妹のお陰である。
「早く治しやがれ。俺は気が気じゃあねーんだ…。」
頬を撫でると春乃妹は無意識にか擦り寄ってきた。
「……やれやれ、我慢するのもつれーもんだ。」
部屋を出た花京院は、ジョセフとポルナレフに向き合った。
「ホリィさんを救う為の旅なのに、申し訳ないんですが、…春乃妹は、承太郎が好きです。」
花京院の言葉に、ジョセフは小さく息を漏らした。
「…やっぱりのォ、そんな気はしておった。」
「ああ、俺も思ってたぜ。あいつら、ぜってー両想いじゃねーの?」
「…僕もそう思ってる。だから…、少しだけでいいんだ。二人だけにさせてあげたい…。」
嬉しそうに、しかしどこか辛そうな顔をした花京院。
「…花京院の妹離れも大変そうだな。」
「ああ、まったくだよポルナレフ。僕も誰かに恋をしてみたいな…。」
「まぁ、この旅が終わったら、好きなだけ色恋を体験できるじゃろ。それまでの辛抱じゃな。」
「そうですね…。…どうやら僕は、承太郎に嫉妬してるみたいです…。」
花京院の言葉に、一瞬ポカンとしたジョセフ。しかし、
「ワッハッハ!」
「花京院らしいーぜ!」
「それは慰めなのか、ポルナレフ…。」
「さぁな…!ま、俺もその気持ちは分かるぜ。俺にも妹がいたしな…!」
「あぁ、そうだったね。」
「わしも、この間の運命の車輪と戦った後、春乃妹ちゃんと少し話をしたんじゃが…、いつでも承太郎に嫁いでいいんじゃよと言ったら顔を真っ赤にしおった。可愛らしいもんじゃ。わしもあと20年ほど若ければのォ。」
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涙の壺