正義
家出少女と別れた一行は、パキスタンを横断していた。春乃妹が家出少女との別れの余韻に浸っていた時。
「しかし承太郎。よく日本の学生服がパキスタンで仕立ててもらえたのォ…。ピッタリだ。」
「毛100%よ。」
「ポルナレフ、運転は大丈夫か?霧が相当深くなってきたようだが…。」
「ああ、ちょっち危ねーかなァ。なにしろ、すぐ横は崖だし、ガードレールはねーからな。」
「うむ…、向こうからどんどん霧がくるな…。まだ3時前だが…、しょうがない…、今日はあの町で宿をとることにしよう。」
一行が辿り着いた街にも霧が立ち込めていた。今まで横断してきた町にあった賑わいも、ここだととても静かだ。春乃妹は妙な寒気に襲われ、腕を擦った。
『…?』
「…おい、」
『!』
「…どうした、顔色が悪いぜ。」
『…平気…。』
「そうか。…何かあったら言えよ。」
『…うん。』
そう言ってすたすた歩き出した承太郎。春乃妹は、何故か寂しくなって、その後を追いかける。無意識に、ヒラヒラとなびいていた学生服の裾を掴んだ。
「…?何だ?」
『…ぁ…、何でも、無い…。』
「…来な。」
『…うん。』
春乃妹に歩幅を合わせてくれた承太郎。ジョセフ達に追い付けば、ジョセフは笑顔でレストランの店主に声を掛けていた。
「アッサラーム、アレイクム!」
目線も合わせず、店主は看板を裏返した。それから、ジョセフがなにを話しかけても口を開かない男。
「もしも〜し、」
「知らないね。」
「え?おい、ちょいと待て。知らないとはどういうことだ?この町の者なんだろう、ホテルはあるのか?ないのか?それをききたいんじゃ。」
店主は店の中に入って行ってしまった。
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涙の壺