運命の車輪

運命の車輪が、車体の腹を見せたまま固まった。

「冷静じゃあないんじゃないのか…?まだ自分達の身体がなにか臭っているのに、気づかないのかっ!!」
「そういえば、さっきからガソリンの臭いがするが!」
「俺たちの体だッ!」
『…ガソリンを、飛ばしてたの…。血の臭いに混じって、分かりにくかったけど…。』
「なにーィッ!?」
「気づいたか。しかし、もうおそいッ!電気系統でスパーク!」

放たれた火花は、承太郎の学ランに引火した。

「ああッ!」
『承太郎…ッ!』
「きゃああああああ承太郎ーッ!!」

学ランが燃え上がり、運命の車輪の使い手の笑い声が響く。走り寄ろうとした春乃妹は花京院に止められ、同じくジョセフもポルナレフに止められた。

「勝ったッ!第3部完!」

膝をついて崩れた春乃妹。しかし、

「ほーお。それで、だれがこの空条承太郎のかわりをつとめるんだ?」
「あッ!」
「まさかてめーのわけはねーよな!」
「承太郎ッ!」

承太郎は学ランを身代わりに、地面にトンネルを掘って避難していた。地面から這い出た承太郎。

「ところで、おめえさっき『道』がないとかなんとかいってたなあ。ちがうね…、『道』というものは自分で切り開くものだ。…ということで、ひとつ、この空条承太郎が…実際に、手本をみせてやるぜ。道を切り開くところのな。」

そして、再び堅く握られた拳。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラーーーッ!!」
「つ、つぶれる、ゲピィ!」
「ああッ!承太郎ッ!」
「…と、こうやるんだぜ。これで、貴様がすっとんだ後に文字どおり、『道』ができたようで…、よかったよかった。」

承太郎がふっ飛ばした男は、がっしりとした体付きかと思っていたが、腕を除く体は貧弱なものだった。逃げようとした男に、ポルナレフが立ちふさがり、背中を踏み押さえた。

「こっ、殺さないでッ!金で雇われただけなんですーっ!」
「「「「「ギャハハハハハハ!!」」」」」

運命の車輪が独りでに萎み始めた。更に笑い転げる一行。男を岩に縛り付けた後、パスポートをと車を取り上げた。

「ところでそれと、…おめーは飛行機でホンコンに帰すからな。」
「ええ!?承太郎どおしてェ〜やだ!やだ!いっしょに行きた〜い!」
「やかましいッ!足手まといになっとんのがまだわからんのかァ、おのれはッ!飛行機代めぐんでもらえるだけでありがたいと思えよッ!!それに…、」

ポルナレフは、少し離れたところに縛られた男を一人で眺めていた春乃妹を指差した。

「おめーを庇って、春乃妹が怪我したんだぜッ!!?」
「…、」
「…そうだよ。今まであんなに出血する怪我も、骨折すらした事もなかった春乃妹が…、」
「花京院、てめーはそこかよ。」
「うるさいなぁ、ポルナレフ!…春乃妹は友達がいたことがないんだぞ…、それなのに、見ず知らずの女の子を、身を挺して庇うなんて…。」
「…わ、分かったよ…。…ホンコンに帰るさ…。」
「その前に、言っておくことがあるじゃろ?」
「…うん。」

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