戦慄の侵入者の巻

空条承太郎が四日ぶりに登校した今日。承太郎の周りを、きゃっきゃうふふと着いてまわる女子生徒達。それに痺れを切らす承太郎が怒鳴るものの、その怒鳴りにすら黄色い声を上げる。その様子を、少し離れた茂みの陰から睨むように見つめる二人の人影。花京院典明と、その妹春乃妹。花京院は、自らが描いていた空条承太郎のスケッチに、筆を落とす。承太郎は石段を下りている。筆が落とされたのは、承太郎の左膝。切断するように横切った。それと同時に、石段を下りていた承太郎の、左膝が裂けた。そして、彼は石段を踏み外した。

「……ほう…、なるほど。なかなか強力な「幽波紋」を出すやつだ…。」

花京院は持っていた画材を捨てた。春乃妹は花京院を見上げる。

『…死んだの…?』
「いや、切り傷程度だよ。彼はきっと、医務室に行くだろうからね。そこで仕留めよう。」
『……。』
「…怖いかい?」
『…少しだけ。』
「大丈夫さ。春乃妹には私が付いている。それに、私の「幽波紋」の敵ではない。…さぁ、行こう。」

花京院は、黒く伸びた春乃妹の髪を撫で、その肩を抱いて茂みを出た。数メートル先、左膝を軽く引きずる承太郎の元へ歩み寄る。承太郎は、近付いてきた二つの人影に睨むように視線を向けた。

『……こんにちは…、』

小さく頭を下げ、消え入る様なか細い声で漏らした春乃妹。そして、

「君…、左足を切ったようだが………、」

花京院はハンカチを差し出した。

「このハンカチで応急手当てをするといい…。」

承太郎はそれを受け取る。

「……大丈夫かい?」
『…痛い…?』
「………ああ…、かすり傷だ。どうってことねぇ。」
『…お大事、に…。』

その場を後にしようと振り返った二人。

「待て。ありがとうよ。見ない顔だが……、うちの学校か?」
「花京院典明。こっちは妹の春乃妹。二人とも、昨日転校してきたばかりです。よろしく。」
『…よろしく…?』

首を傾げる春乃妹。さらりと流れた黒い髪。

「行こう、春乃妹。」
『さよなら…。』

その場を後にする二人。春乃妹は、ちらりと承太郎を振り返ったが、足を止めるわけではなく去って行った。

「へえー、」
「へえー、」
「花京院くんだって!けっこういいんじゃない?」
「そお?」
「わたしはやっぱりJOJOのほうが好き。」
「あたしも。」
「あたしも。」
「ねーねー、あの妹さん、制服着てなかったわよ?」
「そう言えば、ワンピース着てたわ!真っ白の。」
「お人形さんみたいだったー!」

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