女帝

春乃妹の発言に、花京院はこの世の終わりのような顔をした。

『…お兄ちゃん、私、やっぱり変…。』

承太郎は帽子を下げた。

「…春乃妹…、」
『…お兄ちゃん…?』
「大丈夫。何ともないよ。」
『…うん…。』

少し重くなった空気に、承太郎は溜め息を吐きたくなった。

「春乃妹、僕の事は好きかい…?」
『…好き。』
「じゃあ…、承太郎の事は好きかい?」
『……ぁ、』

春乃妹は俯いた。その頬と耳は、心なしか真っ赤になっている。花京院は、春乃妹の気持ちの成長に安心と少しの怒りを覚えた。きっと嫉妬だ。しかし、花京院は、承太郎なら春乃妹を任せてもいいと思っていた。そろそろ、自分達は兄妹離れしなくてはならない時期が来たのだ。

「本人の前でこういう話をするのもどうかと思うけど…。春乃妹、きっと君の、僕に対する好きと、承太郎に対する好きの意味は違うよ。」
『…どうして…?』
「僕への好きは“like”。承太郎へは「止めろ花京院。」…どうしてだい?」
「なんとなくだぜ。」
『…?』
「承太郎、僕は知っているぞ。君はいつも春乃妹を見ているな。君も同じ気持ちなんじゃあないのかい?」
「止めろといってるんだ花京院。おれたちはそういうことをする為にここまで来てるわけじゃあねーんだ。」
「……そうだったね…、悪かったよ承太郎。ごめん。」
「…ああ。」
『…、』
「春乃妹、さっきの話は忘れていいよ。」

花京院は春乃妹の頭をなでると、少し悲しそうに笑ったのだった。

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涙の壺



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