女帝

それから、三人は部屋の中でこれといってするくともなく、暇を持て余していた。承太郎と花京院はコーヒーを飲みながら一息ついている。春乃妹はまだ眠たいのか、ベッドの上に縮こまるように寝転がって、ボーっとしていた。

「春乃妹、まだ眠いのなら寝ておくといい。」
『…平気…。』

くるり、と寝返りをうって、二人に背を向けた春乃妹。その際に捲れたワンピース。そこから伸びた白い脚を見て、二人は思わず口に含んでいたコーヒーを噴き出しそうになった。花京院は承太郎を睨む。

「何だ、花京院。」
「変な目で見るなよ、承太郎。」
「まだ見ちゃあいねー。」
「まだって何だい!?」
「…やれやれ、冗談だぜ。」

春乃妹は、先程の一件で承太郎にぶつかった時の事を思い出していた。いくら必死だったとはいえ、スピードを緩めずに勢い良くぶつかってしまった。しかし、細身の春乃妹は承太郎のガッチリとした身体に跳ね返された。

『…はぁ…、』
「「…?」」

そして、尻もちをついた春乃妹に手を差し出し、立たせてくれた承太郎。春乃妹はその差し出された手に乗せた右手を包み、目を瞑った。手汗をかいていなかっただろうか、汗臭くなかっただろうか…と、春乃妹の頭に浮かんだ。春乃妹を立たせてくれたのは良かったが、春乃妹は思っていたよりも軽かったため、承太郎の胸に飛び込む形になっていた。あの時、春乃妹は驚いたこともあったが、いつもくっ付いている、兄の花京院とは違う“異性”に、戸惑っていた。承太郎からはふわりと軽い香水の臭いがした。思い出して顔が熱くなった。

『…!』

突然がばりと起き上がった春乃妹。

「春乃妹?」
「…。」

スタスタと二人の元に近付く。承太郎の目の前に立つと、承太郎の胸元に顔を寄せた。

「なっ!?何をやってるんだ春乃妹!」
「ッ!?…おい、」
『…違う…。』

春乃妹は承太郎から離れると、次は花京院の胸に顔を寄せた。

「…春乃妹…?」
『…ねぇ、私…変…。』
「え?」
「…。」
『お兄ちゃんだと、落ち着くの…。』
「…何の話をしてやがる。」
『…分からない…。でも…、承太郎だと、ドキドキする…。』

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