皇帝と吊られた男

立ち去ったポルナレフと、その場に佇む春乃妹。花京院は春乃妹の元に歩み寄った。

「春乃妹、突然走り出してどうしたんだい?」
『…ポルナレフに…お守りをあげたの…。折り鶴…。』
「…春乃妹…、」
「…まったく、ポルナレフの奴は…。」
「…追いかけるか?」
「そうですね。やっぱり心配ですし。」
『…うん…。』

一行は、ポルナレフを追いかけながら、「両手とも右手」の男を探した。しかし、全員で追いかけるのも目立つ。そして、効率も悪いとのことで、二手に分かれることになった。承太郎、ジョセフ組と、アヴドゥル、花京院、春乃妹組だ。

「では、合流はホテルで。」
「ああ。」

承太郎ジョセフ組と別れた三人は、道行く人々にポルナレフを見ていないか聞いてまわった。何人目だっただろうか。

「あぁ、その人なら…、ほれ、さっきそっちの角に曲がって行ったよ。」
『…ありがとう。』
「どういたしまして、お嬢さん。」

ポルナレフを見かけたという果物屋の店主に礼を言うと、アヴドゥルは二人に向き合った。

「なんだか嫌な予感がする…。急ごう。」

店主に教わった道を曲がるアヴドゥル。

「ねーちゃん、バクシーシ!」
『…えッ?』
「なー、恵んでよ〜!」
「…すまないが、今はそれどころじゃあないんだ。悪いね。」

春乃妹の手を引いてアヴドゥルの後を追った花京院。しかし、そこで目にしたのは、魔術師の赤を出そうとかまえたアヴドゥルと、その目前に迫った弾丸。

『あっ!』

何が起こったのか、アヴドゥルの背中から突然の出血。それに気をとられたアヴドゥルの額に直撃した弾丸。

「な、何てことだ…!」

二人はアヴドゥルの元に駆け寄る。春乃妹はすぐさま涙の壺を出した。

「ほう〜〜、こいつぁついてるぜ!おれの「銃」とJ・ガイルの「鏡」は、アヴドゥルの「炎」が苦手でよぉ。一番の強敵はアヴドゥルと思ってたから…ラッキー!この「軍人将棋」はもうこわいコマはねえぜッ!」
「アヴドゥルさんッ!」

涙の壺は必死に額の傷を濡らして撫でる。傷は塞がるものの、出血した血が戻るわけではない。

「およ?そこのレディはもしかして…?」
『…?!』
「なるほど、花京院春乃妹ってのはレディのことか。かわいいじゃん〜?今度俺とデートしない?なんてね…!」
『…あなた、嫌い…。』


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涙の壺



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