黄の節制

承太郎がラバーソウルと戦闘している中、本物の花京院典明は、ホテルの周りをうろうろとしていた。

「おかしいな…、承太郎も春乃妹も、僕を置いてどこに行ったんだろう…?」

花京院が春乃妹を迎えに行こうと部屋を出た時、承太郎は先にロビーに出ていると言い、行ってしまった。そして、花京院が春乃妹のいる隣の部屋に向かうと、ドアをノックしても誰も出てこなかった。先にロビーに降りたのだと考えた花京院は、エレベーターで下に降りた。しかし、承太郎達が花京院を待っていることはなかった。そして、今に至る。かれこれ三十分近く承太郎達が戻ってくるのを待っているが、戻ってくる気配が微塵もない。しかたなしに、花京院はジョセフとアヴドゥルのいる部屋に向かった。

「ジョースターさん、アヴドゥルさん!」

ドアをノックすると、出てきたのはアヴドゥル。アヴドゥルは花京院の顔を見て驚くと、すぐに真剣な面持ちで彼を部屋に招いた。

「承太郎と春乃妹を見ていませんか?一緒に行くはずだったのに、いなくなったんです。かれこれ三十分近く待ってたのに、戻ってこない。」
「そのことに付いてだが…、今、ジョースターさんがあの少女から電話を受けている。」
「電話?」
「花京院と思っていた人物が、花京院じゃあなかったと言って、切羽詰まった様子だと、ジョースターさんに聞いた所だ。」
「じゃあ、僕に似た誰か…つまり、スタンド使いと遭遇したということですね。」
「ああ。今、承太郎が戦闘中だ。」



「ははッ、じょ…、じょうだん!冗談だってばさあ、承太郎さんッ!ハハハハハ、ちょ…ちょっとしたチャメッ気だよォ〜〜ん!たわいのないイタズラさぁ!やだなあ!もう〜!本気にした?ま…、まさか…、もうこれ以上殴ったりしたないよね…?重症患者だよ、鼻も折れてるしアゴ骨も針金でつながなくちゃあハハハハハハハハハハ、」
「……もうてめーにはなにもいうことはねえ…。…とてもアワれすぎて、何も言えねえ。オラオラァ!」
「ドベェーッ!」


「いよいよインドへ向かうか。ところで、あの女の子はどうした?」
「列車の出発間際まで、シンガポール駅にいたんだがな。」
「きっと、お父さんとの約束の時間が来たので、会いに行ったのでしょう。」

インドへ向かう列車の中、一行は食事をしていた。承太郎がラバーソウルを倒した後、涙の壺が承太郎の傷を治し、ホテルに戻った。そこで、本物の花京院と再会することができた。

「しかし、シンガポールでのスタンドだが、まったくいやな気分だな。ぼくそのものに化けるスタンドなんて…。」
「ホテルを出る時から、もうすでに変身していたらしい。」
『お兄ちゃんが迎えに来たと思って、着いて行ったの…。初めは…全く分からなかった…。』
「…春乃妹、もう怪我はいいのかい?」
『…平気…。』
「あ、JOJO、そのチェリー食べないのか?ガッつくようだが、ぼくの好物なんだ。……くれないか?」
「ああ。」
「サンキュー。レロレロレロレロレロレロレロレロ、」

一行の乗った列車は、シンガポールから、インドの首都カルカッタへと向かった。

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涙の壺



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