黄の節制

花京院は殴られた反動で、ケーブルカーの中に飛ばされた。しかし、すぐにゆっくりと起き上がった花京院。彼は笑っていた。

「ヒヒヒ、とりつかれているのとは、ちょっとちがうなあ〜。レロレロレロレロ、」

ぐらぐらと揺れる顎の中から、真っ赤な舌が垂れる。

「気付かなかったのかい?おれの体格が、だんだん大きくなっていることに、まだ気が付かなかったのかい?おまえの身長…、一九五cmよりでかくなっているぜ。」
「何者だ!?」
「俺は、食らった肉と同化しているから、一般の人間の目にも見えるし、さわれもする「スタンド」だ。「節制」のカード、イエローテンパランス!これがおれの本体のハンサム顔だ。」

花京院の顔がはじけ、出てきたのは“自称”ハンサム顔の男、ラバーソウル。

『あ…ッ!』

突然、自分の右手を掴んでしゃがみ込んだ春乃妹。

「春乃妹ッ!?」
『…ぃ、たい…ッ、』

その手には得体の知れない、ジェルのようなドロドロとした物がついていた。それは、少しずつ春乃妹の右手を蝕んでいく。

「さっきビンタされた時に喰らいついたのよ〜!ほーれほーれ、承太郎先輩ィ〜〜〜〜〜、手を見なさあい!君の手にも、今殴った所に一部が喰らいついているぜ。」
「!!」

承太郎の右手の小指にも、春乃妹と同じものがついていた。

「いっておく!それにさわると、左手の指にも喰らいつくぜ。左手の指は、ハナでもほじっていな!じわじわ食うスタンド!食えば食うほど大きくなるんだ。絶対に取れん!」
「や、やろー…、オラアッ!」

承太郎はラバーソウルに殴りかかった。しかし、イエローテンパランスは、ラバーソールを守るように、承太郎の右手に絡みついた。そのまま承太郎はケーブルカーの中に引っ張り込まれる。そして、ケーブルカーは二人を乗せて動き出した。

「ジョジョーーッ!!」

家出少女は急いで公衆電話の受話器を手に取った。

「JO…JOJOのおじいちゃん?た…、大変よッ!花京院さんの顔がバガッと割れたのッ!でも、花京院さんは花京院さんじゃあなかったのよッ!そいで!JOJOがケーブルカーの中でヘドロにおそわれ、春乃妹が指を食われて大変なのよォ!」

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涙の壺



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