花京院兄妹

それは、二人がまだ小さな時だ。

「春乃妹、また泣いているのかい?」

花京院は優しく声を掛けると、自分の胸に頭を寄せる妹、春乃妹の頭を撫でた。春乃妹は伏し目がちな瞳から、長い睫毛を震わせ小さく頷く。その動作は、とても美しく、花京院は小さく笑った。

『私…、お化けが視えるの…。』
「お化け?」
『私が泣くと、私の涙を拾っていくの…。』

花京院は昔、春乃妹が何を言っているのか分からなかった。しかし、今となっては、春乃妹の言っている“お化け”が、“幽波紋”であるという事が理解できる。何故なら、彼もその数年後、自らの友となる存在、“法皇の緑”が見えるようになるからだ。




花京院兄妹は二卵性双生児の双子である。外見はよく観察しなければ分からないほど、分かりにくいが、正真正銘二人は兄妹だ。二人に友達は少ない。いや、言うなれば、二人の友達は、“幽波紋”である。花京院の“法皇の緑”。春乃妹の“涙の壺”。そして二人は、一人の男と出会う。その名は“DIO”。

「私と友達になろう。」

二人は顔を見合わせた。恐怖もあった。しかし、自分達二人だけではなかったのだ。彼…DIOも、自分達と同じ“幽波紋”が見えるのだ、と。二人は頷いた。そして誓うのだ。DIOに対する、絶対的な忠誠を。




「行こう、春乃妹。空条承太郎を…殺す。」

またひとつ、小さく頷いた春乃妹の肩を抱き、花京院典明は日本にやってきた。

[ 2/134 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]

涙の壺



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -