黄の節制

ポルナレフが呪いのデーボに襲われた次の日。花京院と春乃妹はホテルを出て、承太郎と少女と一緒に、インドへ向かう乗り物の手配をしに出かけていた。

「アイスクリームちょーだい。」
「らっしゃっい。」

少女はアイスを買いに屋台に行くが、店主はアイスもいいが、とヤシの実をすすめた。それを見た承太郎が、試しに飲んでみるか、と4つ注文した。

「へいどーも、16ドルっす。」
「おい、8ドルにしろ、8ドル。」

花京院は静かに財布を出した。その時だ。

「いただき!」

見知らぬ男が、花京院から財布を盗み、逃げていく。花京院はそれを法皇の緑で追いかけ、男の足首を掴み、転ばせた。それに気付いた春乃妹が、花京院を見る。

「テメーおれの財布を盗めると思ったのかッ、このビチグソがァ〜〜〜〜っ!」
「え?」
「どうした?花京院。」
「ヘドぶち吐きなッ!」

そう言って、花京院は男の顔面にひざ蹴りを入れた。それを見た春乃妹は目を見開き、驚愕の表情を浮かべる。

「花京院!」
『…お兄ちゃん…、』
「この、こえだめで生まれたゴキブリのチンポコ野郎のくせに、おれのサイフを!その尻の穴拭いた指でぎろうなんてよぉ〜〜〜〜っ!!」

花京院は男を担ぐと、バックブリーカーをした。男は血を吐いて気を失っている。背骨の折れる音がした。

「花京院!!やめろといってるのがッ!分からねェのかッ!」

花京院から男を放した承太郎。花京院は眉間に皺を寄せて、承太郎を睨んだ。

「痛いなあ…。何も、僕を突き飛ばすことはないでしょォ。こいつは僕の財布を盗ろうとした、とっても悪い奴なんですよ。こらしめて当然でしょ!ちがいますかねェ?承太郎くん!」

花京院の豹変に、春乃妹は震えていた。今まで一度も、怒って豹変した花京院を見たことがない。承太郎は、じっと花京院を睨む。

「なににらんでるんだよ。ずいぶんガンたれてくれるじゃあないか、承太郎くん。まさか、あんたァー、こんな盗人をちょいと痛めつけたってだけで、この僕と仲間割れしようっていうんじゃあないでしょうねェ。」

花京院はちらり、と春乃妹を見た。春乃妹がびくりと反応する。

「おやおや、どうしたんだい春乃妹。お兄ちゃんの傍においでよ。ほら、いつも一緒だろう?」
『…ぁ…、』
「何?聞こえないなァ…。もっと大きな声で話しなよ。」
『…あなた、誰…、』
「…誰?フフフ、誰って、花京院典明。君のお兄ちゃんさ。そんなことも忘れたのかい?ほら、おいで春乃妹。」

花京院は春乃妹の傍に来ると、グイッ、とその細い腰を引いた。

『嫌ッ!』

ペシン。春乃妹は花京院の頬を叩き、その腕から逃れると、承太郎の背に隠れた。

「酷いじゃないか春乃妹。JOJO、君もそう大げさに考えないでくれよ。今日はちょっとばかりイラついていたんだ…。旅に疲れ始めてね。機嫌が悪いって日さ…。君たちだってそういう時があるだろう…。確かにちょっとばかりやりすぎて、痛めつけてしまったな。」
「「機嫌が悪い?」…良さそうに見えたがな。」

承太郎は花京院に背を向けると、スタスタと歩き始めた。春乃妹も承太郎に着いて行く。しかし、いつものように花京院の隣を歩こうとしなかった。

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