悪魔

蛇口を閉めると、ぽたりぽたりと、シャワーノズルから水が垂れた。立ち込める湯気の中、濡れた髪を束ねて絞る。足元を流れていく泡と一緒に、絞られたお湯がタイルを伝って、排水溝に吸い込まれていった。

『…はぁ…、』

身体に籠った熱を吐きだすかの如く、自然と溜め息が漏れる。そこに、すりガラスの前で誰かがドアをノックした。自分より少し小さい身長から、少女だと分かった。

『…はい…、』
「JOJOと、アンタのお兄ちゃんが来てるよ!」
『…お兄ちゃんと、承太郎?』

すりガラスのドアを開けると、案の定少女がいた。少女は、春乃妹がすぐに出てくるとは思わなかったのか、驚いた目をした。しかし、シャワーを浴びる為に裸だった春乃妹の身体を見て、すぐに顔を真っ赤にして、シャワー室を飛び出していった。春乃妹はかかっていたバスタオルを手に取り、それを身体にまきつけてから、隣にかかっていたハンドタオルで髪を拭いた。しっかりと水気をとると、バックから替えの下着を取り出して身につける。そして、ふわりとフリルのついたワンピースを着ると、シャワー室を後にした。




「よ、よんできたよ!」

少女は顔を赤く染めたまま、承太郎達の元に戻ってきた。

「…顔が赤いが…、」
「へ、平気よ!」

少女の異変に花京院が首を傾げる。少女は冷蔵庫から水の入ったペットボトルを出すと、グラスについで一気に飲み干した。暫くして、シャワー室から春乃妹が出てきた。ひざ丈のフリルのワンピース姿を見て、花京院は優しく微笑む。

「春乃妹、ジョースターさん達のいる部屋に行くよ。」
『…うん、』
「まだ髪が湿っているね。風邪を引いたらいけないから、ジョースターさんの部屋でドライヤーを借りようか。」

花京院の過保護っぷりに、承太郎と少女はただぽかんとその様子を見ていたそうな。





ジョースターとアヴドゥルの部屋に着いた三人は、部屋に入れて貰った。ポルナレフはまだ来ていないようだ。

「ジョースターさん、アヴドゥル、少しドライヤーを借りてもいいですか?」
「ん?ああ、」
「どうぞ、」
「おいで、春乃妹。」

花京院は春乃妹の手を引いて、シャワー室に消えた。数秒後にドライヤーの音が聞こえてきた。

「…承太郎、」
「…なんだ、」
「花京院は、過保護じゃな。」
「ああ。」
「奇遇ですね、私も今そう思ったところです。」

その数分後、ポルナレフが1212号室に来たそうな。

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涙の壺



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