悪魔

無事に部屋割もすんだ一行は、ホテルの部屋でそれぞれ休むことになった。ポルナレフだけが、予約の都合上9階の912号室、ジョセフ等が12階の1212号室から点々と宿泊することに。春乃妹は12階の1206号室にいた。隣の1205室には、花京院と承太郎が宿泊している。春乃妹はベッドに腰を掛けて、ただぼぅっと座っていた。そこに、グラスに水を注いだ少女が近付いて来る。

「ん。」
『…私に…?』
「あんたしかいないだろ!」
『…ありがとう…。』

少女からグラスを受け取り、静かに水を飲む春乃妹。それを、じっと観察するように見ている少女。視線を感じた春乃妹は、少女を見て首を傾げた。しかし、少女は春乃妹と目が合うとすぐにそっぽを向いて、水を飲む。

『…あの…、』
「…何さ。」
『…さっき、どうして承太郎を見てたの…?』
「なッ、なんだっていいだろ!?見ちゃ悪いの!?」
『…ううん、そんなことない…。』
「じゃあ何さ!」
『…何でもない…。』

春乃妹は水をゆっくりと飲み干した。白くて細い首が、水を胃に押し込むように動く。少女はそれに少しばかり見とれていた。そして、自分も水を一気に飲み干した。

「あんたさ、双子なんだって?」
『…春乃妹…。』
「…春乃妹、は、」
『双子…。私は妹なの…。』
「どうしてあんなにベッタリくっ付いてるわけ?」
『…落ち着くから…?』
「そんなんじゃ、将来恋人どころか結婚すらできないじゃない!?好きな相手とかいないの?!」
『…どうしたの?』
「…別に!でも、女同士なんだから、いいじゃない。“恋バナ”ってやつよ!」
『…来いバナ…?』
「恋の話って書いて恋バナよ。」
『…恋…、って、なに?』
「…アンタ、何も知らないんだね。いい加減お兄ちゃんから離れたがいいわ。恋の一つや二つ、しないと人生損するよ。」
『…恋…、』

春乃妹は空になったコップを握りしめたまま首を傾げた。

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涙の壺



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