暗青の月

承太郎は、自分より数秒先に海に落ちて、苦しそうに目を瞑っていた春乃妹の身体を引き寄せた。ごぼり、と春乃妹の口から空気が逃げていく。

「クククク、」

暗青の月とその使い手の男が、得意げに口を開く。

「この俺をなめとったらいかんぜよ…、お兄ちゃん。海中とはいえ、「スタンド」同士の会話が可能だからよって…。もう一ペンさっきのような生意気なセリフをたれてみィ!お兄ちゃんよォ、ああ〜〜!?」
「てめー、なにになりてぇんだ?」
「…?」
「なりてぇ「魚料理」を言いな。刺身になりてえのか?カマボコか?それともスリ身とかよ、てめーの「スタンド」を料理してやるからよ…。」
「このバカが…。強がった口きいとるがよ、おにいちゃん、おたくは今、心の中でこんなことを考えている。「こいつ、一体どれくらいの時間水中に潜っていられるのか?」「自分の限界は2分てとこだが、この女の限界はせいぜい1分くらいか?だったら早く終わらせねーとな…、」とねェーッ。答えてやろう。俺の肺活量は普通の人の3倍よ。そして、潜水の自己ベストは6分12秒!そしてッ!「暗青の月」の水かきは、スクリューの回転よりシャープに動く水中カッター。その上、なめた口をきく前にてめーのスタンドと、てめーが抱えてる嬢ちゃんの脚をよぉーくみてみろッ!」

スタープラチナの身体と、春乃妹が先程掴まれた脚には、フジツボがびっしりと繁殖していた。

「「暗青の月」のつけたフジツボが、どんどんお前らの力を吸いとって繁殖しとるぜ。」

水面に顔を出そうと泳ぎ出した承太郎だが、暗青の月が水をかいて、渦を作っていた為、なかなか水面に行くことができない。その間に、春乃妹の口からは空気が漏れていく。渦の中にはものすごい速さで暗青の月の鱗も流れていた。鱗は、次々と承太郎と春乃妹の身体に傷を付けていく。承太郎は身動きが取れなくなった。

「フジツボに力を吸い取られ…、ろくすっぽ水もかけない「スタンド」で、この水中カッターより鋭い攻撃がくり出せるっつーならよォォーー、おにいちゃん!刺身にするとかぬかしてくれたなあ〜。スライスされて刺身になるのは!」

暗青の月がスタープラチナ目掛けて近付いてきた時、スタープラチナの右手が密かに動いた。

「なッ!」
「『流星指刺』!!」

スタープラチナの指が、暗青の月の水かきを貫き、額を横に捌いた。

「やっぱりてめーだ、刺身になったのは。」

承太郎の勝利だ。

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