暗青の月

『あ…、』
「ん…、俺は…、一体…、」

港に向かうタクシーの中、春乃妹の膝を借りて眠っていたポルナレフは目を覚ました。

「ポルナレフ、目を覚ましたのか。」
「お前は、アヴドゥル…!」
『痛いところ…ある…?』
「い、いや…、ない…。それどころか、傷が消えている!?」

自分の体を触ってみると、痛む場所はおろか、傷が全て消えていた事にポルナレフは驚いた。

『…よかった…。』
「なんだか寝心地がいいと思っていたら、お嬢さんの膝の上だったとは…。ありがとう、お嬢さん。」
『…花京院春乃妹…。お嬢さんじゃない…。』
「失礼、春乃妹。」

チュ、と春乃妹の右手の甲にキスを落としたポルナレフ。それに照れた春乃妹は赤くなった顔を隠そうと下を向いた。それを見ていた花京院は、思いっきりポルナレフの爪先を踏みつけた。

「いってぇええ!!」
「僕の妹に、手を出さないでくれないか。」
「えぇ、お前の妹かよ!」
「僕は花京院典明。春乃妹の双子の兄さ。」

そんなこんなで、港に着いたジョースター一行。

「チャーターしたのはあの船だ。我々の外は乗組員だけだ。外に乗客は乗せない。」

目の前に浮かぶ大きな船。すでに目を覚ましていたポルナレフ。

「ムッシュジョースター、ものすごく奇妙な質問をさせていただきたい。」
「奇妙な質問?」
「…詮索するようだが、あなたは食事中も手袋を外さない…。まさか、あなたの『左』うでは、『右』腕ではあるまいな?」
「……?『左』腕が『右』腕、左が右?たしかに、奇妙な質問じゃ…。」
『そんな人、いるの…?』
「さあ…、」
「いったいどういうことかな?」
「妹を殺した男を探している。顔は分からない。だが、そいつの腕は両腕とも右腕なのだ。」
「「「「『……、』」」」」

ジョセフは自ら手袋を外し、その下にあった義手を見せた。

「50年前の闘いによる、名誉の負傷じゃ。」
「…失礼な詮索であった。許してくれ。」

そう言ったポルナレフは、ジョセフ達に背を向けて語り出した。それはもう三年ほど前。ポルナレフの妹、シェリーが、学校からの帰り道に、その両腕とも右腕を持つ男に恥ずかしめを受け、殺されたという。そして、妹の敵である男を探している時に、DIOに出会った。

「しかし、話から推理すると、どーやらDIOは、その両腕とも右腕の男を探し出し、仲間にしているな。」
「おれはあんたたちと共に、エジプトに行くことに決めたぜ。DIOを目指していけば、きっと妹の敵に出会えるッ!」

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