奇虫襲撃!の巻

承太郎の左手を突き破り、その舌を引っこ抜かんとばかりに伸ばされた口針。

「承太郎!」
「JOJOォーーーッ!」

承太郎は、させんとばかりに歯で口針を止めていた。アヴドゥルの話では、そのスタンドは『灰の塔』というらしい。すかさず、承太郎はオラオラを繰り出すが、いとも簡単に避けられてしまう。更に、灰の塔は他の乗客が座っている座席の一番後ろから、見事に全員分の舌を引き千切って見せた。花京院は思わず春乃妹の目に手をかざし、春乃妹も、恐怖からか震える手で花京院の制服を握った。

「そして、おれの目的は…、」

血で壁に書かれた“皆殺し”の文字…。

「焼き殺してくれるッ!『魔術師の赤』!」
「まて!待つんだアヴドゥル!」
「うーん、ムニャムニャ、なんか騒々しいのォ。何事かな。」

騒がしくしたせいか、トイレに行くと起き上がった老人が、“皆殺し”と書かれた壁に触り、それが血だと気付かれてしまった。騒がれると困る為、花京院はその老人に当て身をする。

「ここはわたしの静なるスタンド、『法皇の緑』こそ、やつを始末するのにふさわしい。」

花京院はそういうと、自分の制服を掴んでいた春乃妹の手をやんわりと放し、自分の背に庇うように立った。

「クク、花京院典明と花京院春乃妹か。お前達の事はDIO様から聞いてよーく知っているよ。特に、花京院春乃妹。お前のスタンドは、役立たずだとな!」
『…ッ!』
「それに、花京院典明…、自分のスタンドが「静」と知っているなら、おれには挑むまい…。貴様のスピードでは、おれをとらえることはできん!!」
「そうかな。…確かに、春乃妹のスタンド、『涙の壺』は、流れた涙をただ集めるだけで、戦闘向きではない。しかし、その壺に溜めてある涙が、後にどういった能力を発揮するかは誰にもわからない!!春乃妹への侮辱は許さん!エメラルドスプラッシュ!!」

法皇の緑の放ったエメラルドスプラッシュは、灰の塔のスピードによりかわされてしまった。そして、法皇の緑の口にも、口針が襲う。

「か…、花京院!」
『お兄ちゃん…!』
「ファハハハハハハ!お前なあ、数撃ちゃ当たるという発想だろーが、ちっとも当たらんぞ!スピードが違うんだよスピードが!…ビンゴにゃあのろすぎるゥゥゥゥゥ!そして花京院!次の攻撃で、今度は貴様のスタンドの舌に、この『塔針』を突き刺して引き千切る!なんなら…、お前の妹の舌でもいいんだぜ?女の舌は、男の舌より柔らかいからなァッ!」
「エメラルドスプラッシュ!」
「わからぬか、ハハハハハハハーーーッ!!おれに舌をひきちぎられると、くるいもだえるンだぞッ!苦しみでなァ!」
「ま…、まずいッ!またエメラルドスプラッシュをかわされているッ!」
『お兄ちゃんッ!!』
「なに?ひきちぎられるとくるいもだえる?わたしの『法皇の緑』は…、ひきちぎると、くるいもだえるのだ。喜びでな!」

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涙の壺



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