機中にひそむ魔の巻
「今はまだ背中だけだが……、そのうち、シダ植物のようなあの「スタンド」は…、ゆっくりとホリィさんの全身をびっしりとおおい包むだろう。」
そう言ったアヴドゥルの額に滲む汗。ホリィは今、ジョセフと承太郎により看病を受けている。家の外で待っているアヴドゥルと花京院、春乃妹。その視線の先には、ホリィを24時間体制で看護する、スピードワゴン財団の医師たちだ。ジョースター一行は、これからエジプトにいるDIOを倒すために、日本を発つ。
「行くぞ。」
成田から日本を出発したジョースター一行は、現在東中国海上空にいる。順調にいけば、あと一時間程でバンコク、さらに翌日の昼頃には、エジプト…カイロに着く予定だ。…その機内。ジョセフと承太郎、花京院と春乃妹、アヴドゥルと空席という形で座っている一行。春乃妹は、窓の外をじっと眺めている。
「春乃妹?何か見えるのかい?」
『…雲、綺麗なの…。』
「…ああ、本当だ。綺麗だね。」
そんな会話をしているうちに、隣の花京院は頬杖をついて眠り始めた。春乃妹も、外を眺めるのに疲れたのか、花京院の肩に寄り添って目を閉じる。
「は、見られた。今、DIOに、たしかに見られた感触があった。」
「ああ。」
「気を付けろ…、早くも新手のスタンド使いが、この機に乗っているかもしれん。」
その数秒後、機内の前方から、羽虫独特の羽音が聞こえてきた。そして、
「か…、かぶと…、いや…、クワガタ虫だっ!」
五人は辺りを警戒する。
「虫の形をした『スタンド』…、」
「JOJO!君の頭の横にいるぞ!」
そのスタンドは気味悪く、昆虫には珍しく涎を垂らしている。更に、口の中からは鋭い歯。その隙間から覗かせた、エイリアンのような口針。すかさず承太郎のスタープラチナが攻撃を仕掛けるが、その攻撃はいとも簡単にかわされてしまった。
「やはりスタンドだ。その虫はスタンドだ!!どうだ…、どこにいる!?こいつを操る使い手はどこに潜んでいるっ!?こ…、攻撃してくるぞ!」
クワガタ虫の口から伸びた、小さな口は、スタープラチナの左手を突き破り、その先にあった承太郎の口の舌に噛みついた。
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涙の壺