夏の思い出

≪ピーンポーン…ピーンポーン…≫

鳴り響いたインターホン。二人は静かに顔を見合わせる。そして、二人の頭に浮かんだのは、家を留守にした両親に言われた言葉。

「いい?二人とも。誰か来ても、絶対に玄関は開けないこと!」
「電話が鳴っても、絶対に出ちゃいけないよ?」
「『はーい!』」

「どうしようか?」
『どうしよ?』

顔を見合せたまま呟く二人。二人の心臓はどくんどくんと一際煩く鼓動を刻む。

「誰だろう?」
『見てみる?』
「見てみよう!知ってる人だったら開けてもいいんじゃあないかな?」
『あ、滝さんかも!』

ポン、と手を叩いた春乃妹。滝さん、とは、花京院家の右隣に住むおばあちゃんである。滝さんは度々花京院家にお菓子や、贈り物を分けてくれる優しいおばあちゃんで、二人はそんな滝さんによく遊んでもらっていた。

「見えるかな?」
『どうかな??』

玄関が見える、居間の大きい窓の前に駆け寄る二人。閉められたレースのカーテン越しに見えた人影。真っ黒いズボンとTシャツを着ているのが見えた。そして、二人は視線を上げて、その人影の顔を見ようとした時だ。

『わッ!』

二回目のインターホンに二人の方が跳ねあがる。人影は玄関の前まで進んだため、壁に隠れてしまった。

「誰だろう…。」
『知らない人かな?』
「知らない人かも!」

なーんだ、と二人が窓に背を向けた時だ。人影は窓の前にやってくると、ジッと窓を見つめた。そしてジリジリと窓に近付く。二人は人影に気付いていない。

『塗り絵しよ?』
「いいよ!」

二人はそんな事を話しながら自分達の部屋に向かおうとした。その時、

「こーら、あんたァッ!人の家を何覗いてんだいッ!」
「ぬォッ!?」
「『!?』」

外から聞こえた滝さんの声に、二人は振り返る。そして聞こえた知らない男の声。窓の外にいたのは、空き巣をしようとやってきた男だった。男は滝さんの怒声を聞いて一目散に逃げて行った。二人は慌てて玄関を開けて、裸足のまま外に駆け出した。

「『滝さん!』」
「典明君、春乃妹ちゃん、大丈夫かい?!」
「うん!」
『あの人だれ??』
「さぁね…。でも最近空き巣が多いみたいでね、でもきっと、あいつが空き巣の犯人だよ。ハ〜ァ、良かった…、二人が無事で。」

滝さんは買い物帰りに怪しい人影が花京院家の前に見えた為、まさかと思い様子を窺っていたらしく…。

「持ってた鞄から、金槌を出してたからね、空き巣に間違いない!って思ったのよ!」

うんうん、と頷きながら力説した滝さん。

「そう言えば、お母さんたちはどうしたの?」
『お父さんと一緒にお買い物なの。』
「今日は初めて二人でお留守番を任されたんだ。」
「あらぁ、そうだったの?なら尚更よかったわ…!それなら、お母さん達が帰ってくるまで、おばあも一緒にいてあげようか。ちょうど、お茶菓子買ってきたのよ!」

そう言うと、滝さんは一度家に荷物を置きに帰り、二人は滝さんが戻って来るまで家の中で待つことになった。そして、滝さんが来ると三人でお茶菓子を囲んでまったりとした時間を過ごした。両親が帰ってくると、滝さんが事情を説明し、両親には無事でよかったと泣きつかれ…。




「その日は、滝さんも交えて家で夕飯を囲みました。」
「そんなことがあったのか…!日本もブッソーじゃなッ!」

シンガポールに向かう途中。“力”のスタンドをもつオランウータンを倒した後、再びボートで海の上を漂っているジョースター一行。花京院は、二人の話を聞きたいというポルナレフの要望に応えていた。

「やれやれだな。」
「二人とも初めての留守番だったので、すごく驚きましたよ。」
「その“タキサン”?ってばあさんに感謝だな!」
「ああ。」
『滝さんがくれるお菓子、好き…。』
「元気かな…、滝さん…。」
「日本に帰ったら、二人で会いに行くといい。」
「そうですね。」
『うん。』

アヴドゥルの言葉に、二人は小さく頷いた。








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