幽波紋の戦士たちの巻

花京院春乃妹は目を覚ました。隣で寝ていたはずの兄の姿が見当たらない。

『…お兄ちゃん…?』

起き上がって広い客間を見渡すが、花京院の姿はない。布団から出て服装を整える。昨日、ホリィに借りた寝間着は、何故かネグリジェだった。しかし、花京院と二人で同じ部屋に寝る為、そこまで恥ずかしさはなかった。流石に、下着まで貸してあげると言われた時は驚いたし、恥ずかしかったが…。ネグリジェから、昨日着ていたワンピース(ホリィに洗ってもらった)に着替えると、髪を手櫛で整えながら、昨日教えて貰った洗面所に向かった。洗面所を借りて顔を洗うと、口を濯いでその場を後にした。広い屋敷内を歩き回って花京院を探していると、一つの部屋の中から話し声がする。どうやら、自分の兄もいるようで、春乃妹はそろりそろりと中を覗いた。

「わたしも、脳に肉の芽を埋め込まれたのは三か月前!家族とエジプトナイルを旅行している時、春乃妹と一緒にDIOに出会った。ヤツは、何故かエジプトから動きたくないらしい。」
「同行するだと?なぜ?お前が?」
「そこんところだが…、なぜ…同行したくなったのかは私にもよくわからないんだがね…。」
「ケッ、」
「…お前のお陰で目が覚めた。ただそれだけさ。…けれど、この事は春乃妹には内緒にしてくれないか?春乃妹は僕が君達に同行すると聞けば、自分も行くと言ってきかないだろうから。」
「…ああ。」

春乃妹には、四人が何の話をしているのか、さっぱり判らなかった。しかし、ジョセフの腕に抱かれて眠っているホリィを見た春乃妹は、気が付くと部屋の中に踏み入っていた。

『ホリィ…さん…?』
「…春乃妹…。」
『ホリィさん、どうかしたの…?どこか悪いの?』
「…ああ、ちょっとな。熱を出して倒れておった。」
『…熱?…昨日は、あんなに元気だっのに…?』
「あー、その、なんだ…実を言うとじゃな、どうやら昨日から具合が悪かったらしい。春乃妹ちゃんに可愛さに、テンションが上がっておったようじゃ。なぁに、すぐ良くなる。」
『…本当…?』

春乃妹はジッと、ジョセフの目を見る。ジョセフの目はすぐに伏せられてしまった。ゆっくりと、ホリィの頭を撫でている。アヴドゥルを見れば、気難しそうな顔でホリィを見ている。ホリィが心配なようだ。承太郎も、ホリィを見たまま帽子を下げた。春乃妹は隣にいる花京院を見上げる。視線に気付いた花京院は心配ないという様に、ポンポン、と軽く春乃妹の頭を撫でくれた。春乃妹はそんな花京院の制服をギュッ、と一度掴むと、ホリィの元に歩いて行った。

『…すぐに、良くなるの…?』
「…ああ、必ずな…。そうじゃ、春乃妹ちゃん。ホリィが良くなるまで、傍に居ってくれんかの?」
『…うん。』

小さく、頷いた。

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