もう一つの物語

無事に花京院が目を覚ましたことに安堵した一行。ジョセフと承太郎は、SPW財団と共にDIOの館の調査に行くことになった。春乃妹も、マリアが気になるということで、ついていくことに。花京院とポルナレフは、退院の手続きをしてから合流する形になった。DIOの館につくと、春乃妹は記憶を頼りにマリアの部屋を探す。承太郎が春乃妹に付き添っていた。

『…ここ、』
「…。」

春乃妹がひとつのドアの前で立ち止まる。そこは、春乃妹がマリアに連れてこられた、マリアの部屋だ。春乃妹がドアをノックした。…返事はない。ゆっくりとドアノブを回すと、ドアは簡単に開いた。

「…どうして戻ってきたの…?」
『マリアさん…、』

マリアは部屋の中にいた。ピアノの前に座ったまま、二人に背を向けている。

『…マリアさんが、承太郎に会いたいって言ってたから…、』
「…、」
「…そう。承太郎さんが生きているってことは…、DIOは…、」
「…DIOは、おれが倒したぜ。」
『…、』

マリアが二人に振り向いた。マリアは泣きながら、二人に笑顔を向けた。

『…マリアさん、』
「…おなかの子供、死んじゃった…。」
『…え?』
「承太郎さん、DIOを倒してくれて…ありがとう。これで、私はなにも残すことなく彼の元に行けるわ…。」
『…マリアさん…?』
「春乃妹さん、承太郎さんと末長くお幸せに…。」
『マリアさん…!!』

マリアは立ちあがり、閉ざされていた部屋の窓を開け放った。

「…私も…、これで…彼と……、」

そう言い残して、マリアは自ら塵となって消えた。二人は目の前で起こったことに頭が追い付かず、暫く呆然と立ち尽くしていた。しかし、春乃妹の瞳から涙が零れたことで、春乃妹は目の前で起こったことを理解した。承太郎も、何も言わず春乃妹を抱きしめて、その震える小さな背中を優しく撫でた。春乃妹は承太郎に身を預け、気が済むまで涙を流した。








エジプトの旅から帰国して2年の歳月が流れた。承太郎と花京院は高校を卒業し、承太郎はアメリカの大学に留学。花京院はSPW財団で働くことになった。春乃妹はというと、もともと学校には通わずに家庭学習をしていたため、承太郎と花京院に着いて渡米した。そして、

「春乃妹ちゃん、承太郎、おめでとう。」
「ああ、」
『ありがとうございます、おじ様。』

承太郎と春乃妹、二人は今日、結婚する。

「…春乃妹、」
『お兄ちゃん、』
「…ウェディングドレス…、すごく似合っているよ。ぼくが春乃妹をお嫁さんにもらいたいくらいだ。」
『…ありがとう、』
「………ああもう!どうして承太郎に嫁ぐんだァーッ!」
『お兄ちゃん?!』
「小さい頃はぼくのお嫁さんになる!って言ってくれたじゃあないかァーッ!うあああああああん!」
「花京院…、」
「…やれやれだぜ、花京院…。」
「おーい、おまえら、時間だぜーッ!」
「ポルナレフ、もう少し静かにドアを開けてくれんか…。年寄りの心臓に悪いぞ。」
「悪かったな、じいさん!さ、行こーぜ!」


第三部 ―涙の壺― 完

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涙の壺



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