遥かなる旅路 さらば友よの巻

『お兄ちゃん!!!』
「…春乃妹…?」

春乃妹は花京院に駆け寄る。涙の壺がゆっくりと花京院の身体を貯水タンクから引き離し、地面に下ろした。

「…本当に…春乃妹…、なの、かい…?」
『うん…!』
「…よか…った…、」
『…お兄ちゃん!?』

春乃妹は花京院を優しく抱きしめる。花京院は気を失ったようだった。春乃妹は花京院の腹部の傷口を見る。制服にぽっかりと穴があいているだけで、身体の穴はふさがっている。試しにそっと触ってみるが、異常はないようだ。涙の壺を見ると、心配ないと言うように春乃妹の頬を撫でた。春乃妹は辺りを見回す。DIOはジョセフを追いかけていった。ジョセフは大丈夫だろか。二人の姿は見えない。春乃妹は二人を追いかけようか迷ったが、花京院が目覚めるのを待つことにした。








花京院典明が目を覚ましたのは、陽が真上に昇った頃だった。目を開けてると真っ白な天井。少し身体を動かすと、自分の手を握りしめたままベッドに伏せている春乃妹が目に入った。

「…ここは…、」
「目が覚めたか、花京院。」
「…承太郎!」
「…声がでけえ。…、起きちまうぞ。」

承太郎は顎で春乃妹をさす。

「…DIO…、は…、」
「ヤツならもうチリになった。」
「戦いは終わったんじゃ…。」
「…ジョースターさん。」
「…ポルナレフ、そこにおるのは分かっとる…。入るなら早く入れ。」

病室のドアを開けて、涙を流しながらポルナレフが入ってきた。

「花京院!!」
「ポルナレフ…、」
「よかったなァ、おい!」

ポルナレフがバシッ、と花京院の肩を叩いた。

「い、痛いな…、」
『…ん…、』
「あ、」
「…ポルナレフ…、」
「…やれやれだぜ…。」
「わ、悪い!悪かった!」
「…春乃妹ちゃんは、片時も花京院の傍を離れんかったようだ。承太郎がDIOを倒し、春乃妹ちゃんを迎えに行くと、ずっと花京院を抱きしめておった。」
「…、」
「…春乃妹…、ありがとう…。」

花京院が春乃妹の頭を優しく撫でた。春乃妹の瞼が震えるとゆっくりと開いた。

『…お兄ちゃん…?』
「春乃妹、」
『お兄ちゃん!!』

二人はきつく抱き合った。ポルナレフはそれを見てさらに涙を流し、ジョセフはそれを笑って励まし、承太郎は帽子で顔を隠しながらも小さく笑った。

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涙の壺



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