DIOの世界
涙の壺は春乃妹の頬を撫でながら、その身体を優しく抱きしめた。DIOがピクリと反応する。
「おい、春乃妹。…おまえのスタンドは、そんなに大きかったか…?」
「!?」
涙の壺は、春乃妹の手に乗るほどの小さなスタンドだった。しかし、今は違う。
『…涙の壺…?』
小さかったその姿は、春乃妹と同じくらいの大きさになっていた。今まで重たそうに持っていた壺は、今は腰のベルトに付けられ、それを隠すように大きなマントをはおっている。
「…フン、まあいい。それで、なにをする気だ?…まさか、このDIOに立ち向かうというのか?マリアがおまえを妙に気に入っていた。」
『…マリアさんは、私と自分が似ていると言った…。私も…マリアさんみたいに強くなる…!…私は…、皆を護るの…!』
次の瞬間、涙の壺は花京院の元に出現した。
「!?」
涙の壺は腰のベルトから壺を取ると、花京院の傷に中身を掛けた。そして、自らがはおっていたマントをその身体に巻きつける。まるでマジックショーを見ているようだった。涙の壺がパチン、と指を鳴らしてマントを取ると、花京院の傷は塞がっていた。
「…君…は…、春乃妹の…?」
【…。】
涙の壺が小さく頷く。DIOのこめかみがひくついた。
「…春乃妹…貴様…。…おまえたちは、血を吸って殺すと予告しよう。」
DIOが二人に襲いかかろうとした時だ。ドゴォオンと大きな音をたて、目の前の時計に穴が開いた。
「エメラルド・スプラッシュ…。なんだ?あらぬ方向を撃ちおって…。」
「花京…、院……。「隠者の紫」!」
ジョセフの隠者の紫が、DIOの身体に巻きつく。
「そして、くらえッ!太陽のエネルギー、「波紋」ッ!」
「老いぼれが…!きさまのスタンドが一番…なまっちょろいぞッ!」
DIOが隠者の紫をひきちぎる。
「春乃妹ちゃん、逃げろッ!」
いつの間に戻ってきたのか、涙の壺が春乃妹の体をマントで包み込み、花京院のいる建物に飛び移った。
「フン!逃がすか…。」
DIOはどうやら、ジョセフの後を追ったようだ。
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涙の壺