DIOの世界

DIOが近付いて来る前に、三人は建物に飛び移った。そして花京院は思い付く。ジョセフはハーミットパープルで、花京院は春乃妹を抱えてハイエロファントで建物を伝っていく。そして、花京院はDIOを倒すべく、春乃妹をジョセフに預けた。

「春乃妹、ジョースターさんから離れてはいけないよ。」
『…お兄ちゃん…、』
「大丈夫、ぼくは春乃妹を置いていかない。必ず勝つ。」
『…待ってる…。』

春乃妹は花京院を抱きしめると、ジョセフと共に逃げた。花京院はジョセフに目配せをすると、二人に背を向ける。二人が走り去った後、対峙した花京院とDIO。花京院が思い付いたのは、半径20mにも及ぶ、「法皇」の「結界」だった。

「くらえッ!DIOッ!半径20mエメラルドスプラッシュをーーッ!」

ジョセフと春乃妹はその声に花京院をみる。しかし、視界に入れたはずのその姿は、次の瞬間二人の視界の隅を横切った。

「『!?』」
「こ…これはっ!ばかなッ!い…、いきなり…吹っ飛ばされている!ばかなッ!」
『お兄ちゃんッ!!!!』
「花京院ッ!」
『…ぅそ、』

花京院の身体は、近くの建物の屋上にあった貯水タンクに打ち付けられた。その腹部にはぽっかりと穴が空いている。春乃妹は涙の壺を飛ばした。届いて…!射程距離は10m。花京院にはぎりぎり届かない。涙の壺が春乃妹を見る。春乃妹はその場に膝をついた。無理だ。自分のスタンドではなにもできない。闘う事も出来なかった自分を、一番護ってくれた兄すら助けることができない…。春乃妹は拳を握りしめた。初めて、こんなに力を入れて拳を作った。ギリギリと爪が鳴る。どうして自分はこんなにも無力なのか!ここで春乃妹は気付く。不思議だ。涙が出ない。自分の感情はこんなにも冷めきってしまっていたのか?春乃妹は思う。自分の能力はたったのこれだけなのか?無力なまま、自分だけが護られて生き延びる?それは嫌だ。ましてや、このままDIOに殺される…これも嫌だ。花京院が、自分の兄が、このまま冷たくなっていくのを黙ってみているのか?…そんなのはもっと嫌だ!!!春乃妹は、マリアに貰ったロケットを、服の上から握りしめた。マリアは、自分を殺そうとしたリリスを生かそうとした。聖母のような優しさ。女神のような頬笑み。その心は戦士のように気高く強く、そして美しい!春乃妹は深呼吸をした。怖くない。大丈夫。皆が自分を護ってくれたように、自分を皆を護ると誓ったじゃあないか!花京院を…、兄を、絶対に助ける!春乃妹は涙の壺を見る。涙の壺は春乃妹を見つめていた。しかし、ふと、その姿が消える。

「ジョセフ…、春乃妹…、次はおまえたちだ。」
「『!!』」

DIOが、すぐ後ろに立っていた。

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涙の壺



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