亜空の瘴気ヴァニラ・アイス

「お休み中失礼いたします。」

ヴァニラ・アイスはDIOの部屋の前で膝をつき、頭を下げていた。

「ご存じだと思いますが…、10分ほど前、ジョースターたちがこの館へ侵入いたしました。さらに…、ダービーが敗北したことと、ご命令どおり、リリスの始末を終えたことをご報告いたします。」

時計の秒針の音が静かに響いた。

「ダービーは…、天才だった…。勝てる実力を持っていながら、ダービーはなぜ負けたと思うね?中へ入れ、ヴァニラ・アイス。」
「……失礼いたします。」







『…素敵な演奏ですね…。』
「…ありがとう、春乃妹さん。」

マリアのピアノに拍手を送った春乃妹。二人の別れの時間が近付いてきた。けたたましい轟音が屋敷に響いた。マリアは春乃妹の手を掴むと、部屋を出る。

「あなたのお仲間がきたみたいね…、急ぎましょう。」
『…はい、』

長い廊下を歩いていくと、人の声と何かを殴る音が聞こえた。マリアは春乃妹から手を放すと、その背中を優しく押した。

「さあ、お別れよ、春乃妹さん。」
『…マリアさん、ありがとうございました…。』
「こちらこそ…、短い間だったけれど、楽しかったわ!」

春乃妹はマリアに頭を下げると、声のする方へ向かった。マリアは春乃妹の姿が見えなくなるまで見送ると、自分の部屋に戻り、再びピアノを奏でた。ショパンの別れの曲だ。そして、涙を流した。





「―――…、」
「――…?」

春乃妹は走った。

「なるほど、不死身だな…、」

はっきりと声が聞こえた。あの声は!春乃妹は飛び出した。

『承太郎…!』
「「「!!!」」」
「…てめーは…、」
『…承太郎…っ、』
「…春乃妹、」

春乃妹は承太郎に抱きついた。承太郎は狐につままれたような顔をしたが、しっかりと春乃妹の存在を確かめるように抱きしめ返した。

「…春乃妹…?」
『お兄ちゃん…っ、お兄ちゃん…!』
「春乃妹!」

花京院が春乃妹を抱きしめる。春乃妹も花京院を抱きしめた。ジョセフとも再会のハグを交わし、春乃妹は喜びに涙を流す。

「本当に、春乃妹なのかい?」
『ええ…。』
「今までどこにおったんじゃ!?」
『マリアさんって人が、かくまってくれてたの…、』
「…マリア…?…はて、聞いたことあるような…、」
「マリア様は、DIO様の妹様です、」
『とっても優しくて、綺麗な人…!』

春乃妹が涙の壺を出す。満タンになった壺を見せ、その経緯を伝えた。

「おいヌケサク、DIOの部屋まで案内しな。」

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涙の壺



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