ダービー・ザ・プレイヤー

「『……、』」

マリアは部屋のドアを閉める。施錠も施し、春乃妹に駆け寄った。

「春乃妹さん、怪我はない?」
『…わ、私は…大丈夫です…。』
「よかった…。」
『…マリアさんは…、』

マリアは一瞬目を見開いたが、春乃妹を安心させるように優しく笑った。

「大丈夫。傷はもう塞がったわ…、」

春乃妹はマリアの破けた服をみる。

『…赤ちゃんは…、』
「!」

マリアは悲しそうに笑った。

「…きっと、大丈夫よ…?…あ、そうだ、私、春乃妹さんに渡したいものがあるの。」

マリアは奥の部屋に消える。服を着替えて戻ってくると、首元からロケットペンダントを取り出した。

『?』
「このペンダント、母の形見なんだけれど、春乃妹さんにあげるわ。承太郎さんと一緒に撮った写真でも入れてちょうだい?」
『え、あの…、』
「受け取って貰えないかしら…?」
『…大切なものなのに…、』
「…いいの。…本当は、DIOと撮った写真を入れていたのだけれど、私よりも春乃妹さんの方が似合うと思って…。はい、」

マリアは写真を抜き取ると、春乃妹の首にペンダントを付けた。春乃妹はペンダントを撫でると、マリアを見つめる。マリアはにっこりと笑うと、立ちあがった。

「…もうすぐ春乃妹さんとお別れなのね…。寂しいわ…、」
『…私も…マリアさんとお別れするのは…いやです…。』
「…嬉しい言葉をありがとう。」

マリアは静かにピアノを弾き始めた。その曲は、嘗て、愛していた男と、その妻になる女性に向けて送った曲だった。マリアの頬に涙が伝う。二人を包み込むようにピアノの音が響き渡った。

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涙の壺



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