地獄の門番ペット・ショップ
再びマリアの体にサソリの尾が刺さる。リリスは目を見開いた。しかし、すぐに不敵に笑いだした。
「アタイのスタンド、“さそり座の女”には、普通のサソリの何倍もの猛毒を持ってんだ。いくら吸血鬼だからといっても、毒は利くんじゃあない?」
「…そうね…、これは少しきついわ…。お腹の子供にもきっとすぐに毒がまわりそう…。」
「…フン、」
マリアはリリスに一歩ずつ近づく。
「でも、無駄よ…。」
マリアの身体を女神が包み込む。
「!」
「すべて、無駄なの…。」
「まだまだァッ!!」
リリスの攻撃は続くが、女神の纏う真っ白なレースがマリアの体を包み、マリアに攻撃が届くことはなかった。気付くとマリアは目の前に立っており、リリスは腰を抜かしてその場に崩れる。
「リリス、」
マリアはリリスの目線に合わせてしゃがんだ。
「あなたはトロイの分まで生きるのよ。」
「…な、」
「命を無駄にしてはだめ。」
マリアが微笑む。リリスは涙を滲ませた。マリアが優しく抱きしめる。
「…うぅ…、」
「泣きたい時は泣いていいのよ。」
「…ふふ…、ふふふハハハハハハハ!」
リリスは笑い出した。そして、サソリが尾を振り被る。
『!!』
その先にいたのは春乃妹だった。マリアが目を見開く。
「死ねェェェェーーーーッ!」
ガオン、という音と共に、サソリの尾が消える。
『…ぇ…?』
「……!アアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
リリスの脚が消える。それと共に、いつの間に部屋に入ったのか、一人の男が立っていた。
「マリア様、」
「あなたは…!ヴァニラ・アイス…、」
「お怪我は…、」
「…平気です。」
「では、この女は処分します…。」
「!なぜです!?」
ヴァニラ・アイスはリリスの髪を掴む。リリスは痛みと恐怖にカタカタと震える。
「DIO様からのご命令です…。」
ヴァニラはそう言うと、自身のスタンド“クリーム”でリリスの身体を飲みこんだ。春乃妹が目を瞑る。その場にはリリスの悲鳴だけが残った。
「では、失礼します、マリア様…。」
ヴァニラ・アイスはクリームの口の中に消えていった。
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