ダービー・ザ・ギャンブラー

トロイは一行が乗っていた車から自分の荷物を下ろすと、数少ない荷物の中からペンと一枚の紙切れを取り出す。紙には【DIOの館にて待つ トロイ・アテッド】と書いて、フロントガラスにワイパーで紙を挟んだ。そして、カフェに停められていた車の家の一台を拝借した。鍵はなくても配線を繋げてエンジンを掛ける、洋画などでよくある方法でエンジンを掛けると、ダービーに意識が向いているジョースター一行を置いて車を走らせた。向かうは主の待つ、DIOの館。

「〜♪」

陽気に口笛を吹きながら車を走らせること30分。DIOの館も近付いてきた。トロイは車を適当な所に停めると、ご機嫌にDIOの館へ向けて歩いていく。その足取りは軽やかだ。館につくと、自分をギロリと見下ろす目。

「ペット・ショップ!久し振りだな!」
「キェェエエエッ!」

ペット・ショップはトロイに向けて一声鳴くと、すぐに目を逸らした。

「…俺はなぜ動物に好かれないのか…。」

トロイは溜め息を漏らして館の中に入っていく。そしてすぐに、DIOの元を目指した。

「DIO様、トロイです。今戻りました。」
「…よくぞ戻った。」
「DIO様…、ジョースターらは今、花京院兄妹を除く四人と、犬が一匹でこちらに向かっています。カイロについてすぐ、ダービーと遭遇しました。やつらが勝てば、恐らく今日中にはここに、」

着くでしょう、と伝える暇もなく、トロイの首にはDIOの指が刺さっていた。そしてすぐに激しい血液の流動を感じ、トロイは自分がDIOに血を吸われていることに気付く。

「カ…、ハ…ッ、DIO…様…、」
「貴様はなぜ帰ってきた。」
「…な、ぜ…?」
「このDIOの為に、やつらのうちの一人くらいは殺してくるかと思っていたが…、期待したわたしが馬鹿だった…。所詮、貴様のこのDIOに対する忠誠は、そこまでのものだったのだな。」
「…ッ、ぁ…、」

トロイはそのまま力無く瞼を閉じる。

「ぼ、くは…、DIO様の…一部になれて、ハァ…ッ、…幸せ…です…。」

一粒の涙を落して、トロイの身体は干乾びて青ざめていった。DIOはまるで紙くずを捨てるように、軽くなったトロイの体を投げ捨てた。トロイの身体は、たくさんのDIOの餌の残骸と共に、部屋の片隅に放置された。しかし、彼の顔はどこか穏やかで、心なしか笑っているように見えた。

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涙の壺



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