「バステト女神」のマライア

リリスはDIOの元へ向かっていた。先程、自分のスタンド“さそり座の女(Woman of Scorpion)”で操ったサソリが、弟のトロイと合流した。あとはトロイが奴等を欺いて屋敷に戻り、こちらでジョースター一行を迎え撃つのみ。しかし、その前にDIOに報告しなくてはならないことがある。リリスは長い廊下をつき進み、目の前に現れたドアをノックした。

「DIO様、リリスです。」
「…入れ。」
「失礼します。」

中に入ると、DIOが椅子に座って本を読んでいた。リリスはDIOに近付くと、片膝をついて座る。

「ご報告に参りました。」
「…話せ。」
「トロイの情報ですと、ジョースター一行はナイル川を下り、カイロに向かっているとのこと。トロイは近々、ジョースター一行の目を盗んで戻ってくるそうです。」
「…。」
「それと…、」
「まだなにかあるのか。」
「…マリア様ですが、花京院春乃妹を部屋から連れ出したようです。恐らく、花京院春乃妹を逃がす為だろうと思われます。」
「かまわん…。マリアの好きにやらせろ。」
「しかし!」
「リリス、親を亡くして途方に暮れていた君たち姉弟を拾って、ここまで育てたのは誰だ。」

DIOから発せられるオーラに、リリスの額に汗が浮かぶ。

「…も、申し訳ありませんでした、DIO様…。」
「…春乃妹はマリアの好きにさせておけ。マリアにこのDIOは裏切れん。」
「…は、い。失礼しました。」

リリスは部屋を後にする。その額から大量の汗が流れ落ちた。上がった息を整え、リリスは自分の部屋に戻った。マリアの部屋の前を通った時、春乃妹とマリアの楽しそうに笑い合う声が聞こえて、リリスは泣きそうになった。

「…あの女だけは…、」

握りしめた拳からは、ぽたぽたと血が流れていた。

リリスとトロイ、二人は2つ歳の離れた姉弟だ。血は繋がっている。早くに親を亡くした二人は、家を追い出され、路地裏でごみを漁り、時には人目を盗んで盗みをした。二人はスタンド能力を持っていた。リリスの“さそり座の女”は大きなサソリの動体を持つ女の姿をしたスタンドだ。サソリを自分の意志で操ることができる。一方、トロイのスタンド能力“無神経(Insensible)”は蛇の形をしたスタンドで、触れた人物、または動物から神経を奪う事が出来る。トロイは無神経で春乃妹に触れ、無神経は春乃妹の視覚神経を奪った。しかし、マリアによって、無神経は解除されてしまったが…。

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涙の壺



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